開催報告: 社内人材育成コミュニティ連携イニシアチブ(JACO) – 第5回Meetup

3年半という短期間で、目標としていた「クラウド、アジャイル、AIが当たり前である」状態を実現したDNP。その成功要因は何なのでしょうか。

2021年11月10日18:00から行われたイベント Jagu’e’r デジタル/クラウド人材育成分科会 JACO Meet up #5 におけるDNP 和田さんのセッションは、「普段話せないテーマをたくさんお話します!」という胸が熱くなるコメントからスタートした非常に濃い内容のものとなりました。

この記事では、約40名の方にご参加いただき質疑応答も大変盛り上がった「DNPのCCoEが仕掛ける人材育成について」のセッション内容について Jagu’e’r デジタル/クラウド人材育成分科会 上田 佳典がダイジェストでご紹介致します。

DNPが目標とする姿に至るまで

本セッション最後のまとめのパートにて、DNPが目標とする姿に至るまでの取り組みや工夫について整理いただいております。

内容が盛り沢山なセッションでしたので、本記事ではまとめパートで言及いただいた5つのポイントにフォーカスして順番に見ていきたいと思います。

1. 会社が求める人物像を明確にする

1点目は、会社が求める人物像を明確にし、その人物像に合わせたプログラムを作っていくことです。並行して、慎重に人選した運営メンバーを巻き込み、コミュニティを形成します。

上記はCCoEメンバーに求めるマインド、CCoEの将来像をまとめた約70ページのDNP社内資料である “CCoE2021” の内容です。

“CCoE2021” に記載されたマインドと人物像は、CCoEを形成する本務、兼務、Team CCoE、合計で700名を超える全てのコミュニティ・メンバーに求められるものです。

加えて、「クラウド人材ではなく、リーダーシップなどに秀でたDX人材であること」や、「ハードスキルだけでなくソフトスキルも備えていること」も重要視しています。
例えば、CCoE兼務メンバーをリクルーティングする際に、参加するタイミングでのクラウドのスキルの有無はそれほど重視しない一方で、「人間力」の観点を重視してメンバーを選びます。
クラウドのスキル、つまりクラウドの知識を知っているかどうかは一過性のものであると考え、色んな人から好かれる人や愛されキャラをメンバーに入れることが会社や組織としてプラスになると考えます。

例えば、多くの企業において、新しいイニシアチブに兼務のメンバーをアサインする際には、育成・学習の目的も兼ねて若手がアサインされることが多々あると思います。
ところが、今回のCCoEのケースでは、特定の組織で影響力があるキーマンを厳選してCCoE兼務メンバーに入れるなど、非常に慎重にスカウトを行っています。
また、講師や参加者として、勉強会の場に多くの仲間を集めてきた影響力のあるメンバーをどんどんスカウトし続けました。

また、メンバーのアサインについては、CCoE の活動について首を縦に振らないステークホルダーと仲良くするための工夫も存在しています。
社内に様々な考えや立場の方がいるため、当然クラウド、アジャイル、AI に理解を示してくれないステークホルダーも存在します。
そんな場合は、その方と仲が良い人、対等に議論できる人を CCoE チームに入れました。
また、品証、インフラ、アプリのアーキテクト、バックオフィスのメンバーも参加しているのですが、バックオフィスのメンバーが早くから参加していたことについても理由があります。
その理由とは、クラウドの利用においてはオンプレの場合と比べて様々な社内手続きやお金の流れが変わるため、早期からバックオフィスのメンバーにもクラウドを理解してもらったほうが、クラウド化がよりスムーズに進むためです。

2. 自社の成熟度に合った育成プランを自ら考え創り出す

2点目は、自社の成熟度に合った育成プランを「自分で」創っていかなければならないということです。

まずはCCoE全体でメンバーが十数名しかいなかった時に、一番はじめの取掛かりとしてメンバー全員がクラウドベンダーの研修を全コース受講しました。
具体的には、インフラ、アプリ等、各レイヤーを担当するメンバーが3ヶ月集中的に研修を受講し、その後、約6ヶ月かけてガイドラインやコアとなる共通サービスを作りました。

その上で、DNPならではの育成プランを内製し、ユースケース別の研修を整えました。
研修を整える際は、全社横断で人材育成の方針を効率的に司っているCCoE外の部門とも連携しつつ、実行部隊はCCoEが担っています。

3. コミュニティを形成し「みんなで」学習し成長する

3点目は、業務の傍ら継続することが大変な勉強を楽しみつつ、皆で成長するためにコミュニティを形成することです。

DNPのCCoEの特徴はヒエラルキーではなくコミュニティ型であることです。
もしスキルの高いスターが揃ったチームを作った場合、スターの人達に頼りきりの依存型組織になります。
その上で、スター以外のメンバーの底上げをしなければCCoE のスターの人達にタスクが集中し、どんどん大変になってしまうという悪循環が生まれてしまいます。

組織・個人として学習するためのコンテンツ作りの点で、CCoEの中でも特に重要なセキュリティガバナンスの確立は本務のメンバーが担当しています。
一方で、実際にクラウドを活用して次々とサービスを開発する主体者は、700名を超えるコミュニティの大部分を占めるTeam CCoEのメンバーです。Team CCoEのメンバーへの教育に注力し、各メンバーがスターに依存することなく自己成長することで、CCoE 全体の底上げを実現しています。

4. 「何を実現したいのか」を考え、高い目標を掲げ、その過程でクラウドを自然と学習する

4点目は、何のためにクラウドを使うのかをしっかりと意識することです。
DNPの場合は、世の中に求められている価値のあるサービスを早く届けたいという目標を常に意識し、その過程で自然とクラウドを学習するプログラムを意識して提供しました。

そこで、DNPが注目したのは、メガクラウドを生み出す「カルチャー」やデジタル変革を体現する「組織風土」、「組織構造」でした。
それらに共感し、積極的に吸収すべく、Google をはじめとする他の企業やパブリッククラウドとの新たな関係性を構築することを目指しました。
活動目標を、先進技術を活用したサービスの立ち上げや、コンテストで優勝し世界一になることに設定し、その過程で自然とクラウドを学習することで、経営層目線でも活動チームにエースやキーマンを投入する意思決定が行われやすくなります。
一方で、活動の目的をクラウドの勉強自体に設定すると、前述のようにリソースが空いている人や若手がアサインされ、エースやキーマンがアサインされにくくなってしまいます。

5. 思いついたらまずはやってみる!

最後の5点目は、思いついたら躊躇せずにやってみること。やってみたいなぁと思ったことが実現が難しそうなものであっても、オファーをしてみると意外とうまくいくということです。

例えば、クラウドベンダーとの合同研修や特別プログラムの開催を提案してみると、意外と実施まで漕ぎ着けることができます。

また、イベントへの参加や資格取得については、Team CCoE に強制するのではなく、とにかく数をこなし、参加者の興味を引くようなテーマに形を変えて何度もチャレンジします。
例えば、 今時点では Google Cloud を使いたいという思いが湧いていない人に対しては、心理的安全性などのカルチャーの話を入り口として興味を持ってもらったり、あるクラウドベンダーさんのイベントについては、単純明快にAIのラジコンレースで世界で優勝しましょう!というキャッチコピーで訴えることで仲間づくりに成功したそうです。

また、メンバーがクラウド環境を触りたいと思い立った時に、いつでも好きなだけ手を動かすことができるSandbox環境が用意されているとのことです。
初心者が自らクラウドを利用する環境を整える際に入り口で挫折してしまうことを防ぎ、思う存分試行錯誤ができますね!

質疑応答

大盛り上がりの中、あっという間にセッションが終了し、質疑応答に移りました。
質疑応答での和田さんからのお答えの多くは、ここまで記載した内容の中に散りばめました。

心が折れそうになった時どうしたかという質問に対しては、2つのポイントについて触れて頂きました。
一点目は、これまでの3年半にたくさんのことをこなしたため、忙しすぎて心が折れる暇がなかったこと。
二点目は、同じ目標を共有した仲間がいたため支えになっていたこと。
ここまでの和田さんのお話を踏まえると、非常に納得できるお答えでした。

最後に

JACO Meetup は普段は2部構成ですが、今回は和田さんのセッションのみの1部構成とし、普段の倍のお時間でお話しいただきました。
恐らく2021年最後の JACO Meetup となるであろう本イベントを通して、参加者の皆様は決意を新たに2022年を迎えることになると思います。

Jagu’e’r では会員を募集しております。
Japan Google Cloud Usergroup for Enterprise(Jagu’e’r) 会員登録申込みフォーム http://goo.gle/Jaguer

上記の登録に加え、下記フォームにお申し込みいただくことで 分科会のSlackグループに参加することができるようになり、本セッションの資料をダウンロードすることが出来ます。
Jagu’e’r 「デジタル/クラウド人材育成分科会」 会員登録申込みフォーム http://goo.gle/jaguerjinzai

長文になりましたが最後までお読みいただきましてありがとうございました。
それでは、次回のJACO Meetup でお会いしましょう!

お知らせ

今回ご登壇いただいた DNP 和田さんも登場する CCoE 本が発売されました。
和田さんも講演の中で紹介されていましたね。
DNP、Docomo、KDDI、富士フイルム、ビジョナル、みずほ、など様々な企業のCCoE事情が赤裸々に明かされる内容になっています!
ぜひお手にとっていただければ幸いです。

DXを成功に導くクラウド活用推進ガイド CCoEベストプラクティス

https://www.amazon.co.jp/dp/4296070150/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_76AZDFENH96Y7WFQ3QZC

Jagu’e’r デジタル/クラウド人材育成分科会

Yoshinori Ueda

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