Jagu’e’r で「有識者と実践者が語るCCoE(Cloud Center of Excellence)」の連載を開始します!
本シリーズ「有識者と実践者が語るCCoE(Cloud Center of Excellence)」の連載にあたって
国内外の企業において、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」というキーワードが、あらゆるシーンで頻出しています。DXを実現するためのステップでは、初期段階で①DXとは何か ②DXを実現するための要件は何かを整理していく必要があります。企業規模が大きくなればなるほど、整理する項目は多く煩雑な作業となり、DXへ踏み出す前に競合優位性が失われていく、そんな課題や不安に日々悩まれているご担当の方も多いと考えています。
この連載シリーズは、そのような課題感を持つ皆さまにご活用していただくために、Japan Google Cloud Usergroup for Enterprise(Jagu’e’r)内で発足したCCoE研究分科会により企画されました。(図1)であらわす通り、DXに向かうにあたっては企業がオフィシャルなビジネス基盤としてクラウドを安心安全に整備し、利活用していくことが不可欠です。そして、クラウドの利活用には、CCoE(Cloud Center of Excellence)の存在有無が大きなキーポイントとなると理解しています。我々はこの連載を通してCCoEとはなにか?どのように構築運営していけばよいのか?を紐解くことで、皆さまのDX推進に寄与したいと考えています。
(図1)
また、この連載の著者として、複数のエンタープライズ企業においてクラウドを導入し、利活用を推進してきたエキスパート(【有識者】と【実践者】)の皆さまにご参画いただきました。皆さまの共通経験として、クラウドの有効的な利活用のため、個々の組織内にCCoE を設置したことが挙げられます。私自身も、メガバンクや大手製造業においてCCoEを立ち上げ、その運営をリードしてきました。様々なコミュニティやビジネス交流を通して、多くのCCoEエキスパートの皆さまと知見を共有してきたことが、成功の秘訣だと感じています。そのような知見をこの連載で整理し、皆さまへ広く公開することができることに深く感謝致します。
本連載シリーズ構成と担当するエキスパートのご紹介
この連載は、主に下記の構成でCCoEの分野で知見の豊富なエキスパート【有識者】の方々より、シリーズ化していく予定です。
シリーズ1.DX成功の鍵はクラウド利活用とCCoE
DXとクラウド利活用の関係性を分かりやすく紐解いていきます。DX成功の秘訣はクラウド利活用にあること、さらに、それを支えたのがCCoEであることを今一度このパートで確認していきます。ご担当いただくのは、様々な業種のお客様をCCoE、マルチクラウドでご支援されてきた株式会社 野村総合研究所の遠山陽介氏です。
【予定コンテンツ】
- DXとCCoEの関わり方
- 守りのCCoE、攻めのCCoE その違い
- クラウド利活用できる組織の特徴
シリーズ2. ユーザー企業におけるCCoEの実態
日本のユーザー企業におけるクラウド利活用状況とCCoEの運営状況を解説します。ご担当いただくのは、これまで多数のエンタープライズ企業におけるクラウド利活用を支援してきた、株式会社 NTTデータの伊藤利樹氏です。
【予定コンテンツ】
- CCoE 立ち上げ期/成長期/安定期 における要件
- CCoEが効果的に運営されている事例とアンチパターン
- IT部門目線、ユーザー部門目線からみるCCoE
シリーズ3.CCoEのこれまでとこれから
最後のセクションでは、CCoEの体制/役割/効果の概要を説明しつつ、それぞれについてのポイントを詳しく説明します。必要に応じて諸外国の状況と国内状況を対比しながら、クラウド利活用及びCCoEのスムースな立ち上げと運営がより重要になることを検証していきます。ご担当いただくのは、金融、公共の監査サイドから様々なCCoE支援を実施してきたPwCあらた有限責任監査法人の饒村(じょうむら)吉晴氏です。
【予定コンテンツ】
- CCoEのベストプラクティスモデル(国内/海外)
- BeforeCCoE :スポンサーシップや、人材要件(リーダー)
- 体制:経営層・IT部門・現場部門との関係性
- 役割:運営・管理から見る組織内への据え付け方
- 効果:コスト、ビジネスの面で見込める効果
- AfterCCoE:クラウド利活用とCCoEの今後
本連載シリーズのご活用方法
クラウドサービス利活用、そしてDXの根幹に強く影響するCCoEですが、そのあるべき姿やベスト・プラクティスについては、これまでオープンに議論されることはありませんでした。 それぞれの企業のビジネス環境や経営状況によって、CCoEが設立される背景や手法は異なりますし、その目的や効果も様々です。個別にCCoE実践企業にアドバイスを求めたり、知見を共有してもらったとしても、その実践企業固有の事情を反映したものとなってしまうでしょう。この連載では、様々なバックグラウンドを持つ【実践者】各位から、多様な産業での事例を通してCCoEのベスト・プラクティスを探っていきます。このようなWeb連載という形で、いつでもどこからでもCCoEのベストプラクティスにアクセスできるように、これから皆さまがDXを自社で実現していくための道標としてご活用いただけるようになることを目指します。
本連載は、読者の皆さんが置かれているポジションを想定し、それぞれのポジションから推定される読み方とネクストアクションへの進め方を以下に提案します。
<① 本社組織・役員の方>
デジタルを活用した競争戦略の立案は喫緊の課題かと考えます。まず、先に述べたCCoEが自社に存在するか否か、そのオーナーシップがIT部門にあるのか、事業部門にあるのかをご確認下さい。どのような体制で、何をアウトプットしているのかを確認・整理します。本連載において示されるベストプラクティスと照らし合わせることで、自社に【体制、役割、効果】の面で不足している項目を明らかにし、それぞれを解決するためのファーストアクションとして推進リーダーを任命します。リーダー達とコミュニケーションをしていく中で浮き彫りとなってくる様々な課題は自社内で解決しようとせず、オープンな手法が望ましいでしょう。例えば、クラウドのインテグレーションに明るいベンダーへ一部業務委託することや、ベンダー主催のコミュニティに参加し知見を得ること、などです。これがセカンドアクションです。
次に、目指すべきCCoEの姿と目的が明確になったところで、中期経営計画などの経営計画へ盛り込んで下さい。それにより、社内外からの協力と理解が得やすくなるでしょう。これがサードアクションです。
最後に、他の組織運営と同様に、CCoEは一度立ち上げたら終わりというわけではありません。日々の改善ルーティンを回していくことが品質を高め、維持していく最も重要なワークとなります。CCoEにかかわる人員のサスティナブルな活動環境を目指してください。例えば、バーチャル型組織とすることでハード型組織の組織変更影響を最小限に留めることや、任期が充分に残っている決裁者を据える、などです。本社組織(人事、経理、法務、コンプライアンス等)に属している担当者の方々は、クラウドを対岸の問題と捉えず、ご自身の部門における重要な検討項目の一つとして盛り込んで下さい。例えば、従量課金型のクラウドをどのように経理として取り扱っていくのか、デジタル人材としてクラウド関連の有資格者増加に対してどのようなアプローチを取っていくのか、自身の企業が属する業法と照らし合わせた適切なクラウドのリファレンス整備、などが取り組みとして存在するでしょう。更には、CCoEにご自身がご参加し、多種多様なメンバーと意見交換することでアウトプットの品質向上が見込めますので、そちらも併せて検討すると良いでしょう。
<② CCoEメンバーの方>
既に自社にCCoEが存在し、参画されているメンバーの方にとって、この連載は他社事例やベストプラクティスとの比較ができる良い機会になると考えます。エキスパートの皆様から語られるCCoEの【体制・役割・効果】について照らし合わせていくことで、自社のCCoEに足りているところ・足りていないところを明らかにして、次ステップへの足がかりとして下さい。
<③または④ IT部門・R&D部門のエンジニアリングに関わる方>
ユーザー部門は、日々ビジネス課題と直面しています。それらを解決し、将来のために増力していく、そのためのクラウド・デジタル戦略立案と実行はIT部門やR&D部門の役割です。所属しておられる読者の方は、本書の様々な事例と照らし合わせながら、自社にCCoEが存在する場合は【体制、役割、効果】の面で事例やベストプラクティスを参考に、自らの参画をご検討下さい。CCoEの中で、ITやR&D部門の技術に明るい方々への役割期待は一般的に大きく、プロジェクトのアーキテクティング支援であったり、クラウド固有のリスクアセスメントへのアドバイスなど多岐に渡ります。CCoEをまだ組成できていない場合は、この連載の内容を参考に、上司へCCoE組成の提言をする等、アクションをご検討下さい。
ITシステム関連会社、子会社の方々や、実際にモノづくりを日々行っている方々もこちらに含まれると考えます。その場合は、親会社やホールディングス、経営サイドで策定されているデジタル戦略、IT戦略、クラウド利活用戦略などを取り寄せ頂き、その内容を確認することから始めましょう。本連載を読み進めていただきながら、自社にCCoEがある場合はオーナーを確認し参画を検討して下さい。CCoEが自社に無い場合は、本社IT部門や経営企画部門などへ、自社と協業するスキームでの組成を提言して下さい。様々な本連載の成功事例をエビデンスとし、自社へ転用できる要素をピックアップし肉付けし提言資料作成にお役立て下さい。
<⑤ ユーザー部門の方>
デジタルを活用した自社ビジネスの省力化(コスト削減)及び増力化(ビジネス拡大)を計画されていて、ご自身がその担当者である場合は、CCoEが自社に存在するかどうかをまずご確認下さい。CCoEが存在する場合はすぐにそのキーマンにコンタクトを取り、最適なクラウド利活用とご自身のミッションへの活用を進めて下さい。CCoEが存在しない場合は、本連載で後述する「IT部門ではなくユーザー部門でありながらCCoEを組成し、後日IT部門と連携していく事例パターン」を用いて、ご自身の活動を後押ししてくれるスポンサーを確保し、CCoE組成に向けて活動を開始しましょう。日本におけるクラウド黎明期には、実際のニーズを抱えているユーザー部門の皆さまが一念発起し、CCoEを立ち上げ、後からIT部門等と連携していくパターンが多く見受けられました。そのような形での推進も企業のデジタル化フェーズにより採用することが有効かと考えます。
CCoEは立ち上げ後の運営が重要
CCoEを立ち上げていくための手法やキーポイントをお示しした本連載の後には、CCoE立ち上げと運営に精通されているユーザー企業側のエキスパート【実践者】の方々から、CCoE立ち上げ後の運営の重要性をお伝えしていくコンテンツを予定しています。
CCoEは、組織としての成長フェーズにより役割が変化・追加されていきます(図2)。様々な業界・業種の視点から、実際の事例をベースに公開いただくことで、より皆さまのご参考になればと考えています。 この部分でご協力いただくユーザー企業の皆さまは下記の方々です。それぞれの企業におけるCCoEがどのような成長フェーズにあるのか、そして現在どのようなCCoEの形を目指し、これまでどのような課題に直面してきたのか、を中心にお伝えしていく予定です。
・大日本印刷株式会社 和田 剛氏
・パナソニック株式会社 渡邉 勇太氏
・KDDI株式会社 大橋 衛氏
・株式会社みずほフィナンシャルグループ 渡邉 裕子氏
・富士ゼロックス株式会社 田中 圭氏
・株式会社NTTドコモ 住谷 哲夫氏
(図2)
(図3)
最後まで読み進めて頂き、有難うございます。これからの連載に、ぜひご期待下さい!
Jagu’e’r CCoE研究分科会
Yoshikazu Kurosu