CCoE活動の施策とKPI策定例

 

デロイト トーマツ ウェブサービス株式会社(DWS)の安木です。

前回のブログ記事「CCoE活動のKPI設定で考慮すべきこと」では、CCoE活動のKPI検討をする際に課題となることを紹介しました。こちらの記事について、多くの方からご感想やご意見をいただきました。
そこで今回のブログ記事では、CCoE活動の具体的な施策やKPIの設定例について紹介します。ダウンロードできるエクセルファイルも添付しておりますので、ご興味があればそちらもご活用ください。

 

前提

本記事は「CCoE担当が現場目線で考えた施策が、経営層や上席に承認されづらい」という課題を解消する方法の一例として執筆しています。内容は現場目線でのボトムアップ的なアプローチのものとなっており、全ての組織において有効なアプローチであるとは限らない点、ご了承くださいませ。

 

前回のブログ記事の要旨

前回のブログ記事では、CCoEの活動はコスト削減やセキュリティ強化が主なものになってしまい、本当に現場で求められている施策が承認されづらくなっている実状について紹介しました。具体的には、一般的に経営層や上席の関心は「売上増加」「コスト削減」「セキュリティ強化」にあることが多く、それに対してCCoE施策の結果が直接そこにインパクトを与えないため、施策の効果が説明しにくい、というものです。

そこで、直接「コスト削減」や「セキュリティ強化」にインパクトを与えない施策については、「課題→施策→なぜ有効か→KPI」の順で整理することで、施策やKPIがビジネスにどのような影響が与えるかを説明することが可能となります。

また、これはCCoEとして現場で求められている施策が説明しやすいというだけでなく、経営層や上席の目標に貢献できているということにも繋がり、会社の方針に合う施策を実現することにも繋がります。

 

「会社の方針」と「現場の感覚」の不一致の課題

しかし実際に上記の考え方でCCoE施策を整理した場合にも、実態として経営層や上席から承認を得られないケースがあります。一例として、上記の勉強会開催を例に挙げて考えます。

  • 課題:技術的なボトルネックが存在しており、システム開発期間が長期化しているプロジェクトが◯件ある。
  • 施策:勉強会を開催する。
  • なぜ有効か:勉強会を開催することで技術的なボトルネックが解消し、◯件のシステム開発のプロジェクトの期間が短縮しコスト削減が可能となる。
  • KPI:勉強会開催数

この要因として、大きく以下の2つが挙げられます。

  1. 経営層や上席は、開発期間の長期化を目先で課題と思っていない
  2. 勉強会開催数が本当に開発期間の短縮に繋がるのかがイメージできない

 

課題を「コスト削減」「セキュリティ強化」に繋げる

「1. 開発期間の長期化は目先で課題と思っていない」という課題を解決させる方法を考えます。改めて、一般的に経営層や上席の関心は「売上増加」「コスト削減」「セキュリティ強化」にあります。

したがって、解決するべき課題をコスト削減やセキュリティ強化に置けば、経営層や上席の理解を得ることができるようになります。先程の勉強会開催の例で、課題がコストであることを明記し整理します。

これにより「1. 開発期間の長期化は目先で課題と思っていない」の課題を解決させる事ができました。

しかし、このように整理すると「2. 勉強会開催数が本当に開発期間の短縮に繋がるのかがイメージできない」という課題が顕著になります。これは冒頭にも述べた通り、全てのCCoE施策が直接「コスト削減」や「セキュリティ強化」にインパクトを与えるとは限らず、無理に繋げようとすると納得感が得られなくなるからです。

 

課題を「会社が求めているもの」に繋げる

ここまでの内容を整理します。最初の例では、開発期間の長期化を課題に掲げたものの、経営層や上席はそもそも開発期間の長期化が課題だと思っていない、というケースを紹介しました。

そこで一般的な関心事である「コスト削減」を課題に掲げましたが、今度は施策と解決する課題までの距離が遠くなり、納得感が得られなくなりました。

つまり、施策を整理する際には、以下の2つを満たすように整理する必要があります。

  1. 最終的に解決する課題は経営層や上席の考えと一致させる。
  2. 解決する課題から施策までの距離を近づける。

これを解決させる方法の一つとして、課題する課題を「コスト削減」や「セキュリティ強化」に設定せず、会社が個別に求めているものに収束させることを考えます。

前回の記事でも触れましたが、「社内システムのクラウド利用率を向上させたい」という目標が既に会社として設定されているのであれば、そこに繋げることで上記の「1.」「2.」の課題を共に解決させることが可能です。

こうすることで、経営層や上席が課題と思っていることに対して、施策によりそれが解消できることがイメージできるようになりました。

 

CCoEの施策とKPI策定例一覧のダウンロードリンク

CCoE支援を担当している中で、「他社ではどんな施策をしているのか」「何をKPIとしているのか」という課題を抱えているご担当者様をよくお見かけします。これは、多くの組織で共通的に持たれているものだと思います。

そこで今回、CCoEの一般的な施策について、これらをまとめたエクセルファイルを作成しました。エクセルファイル内のシートは3つに分かれており、以下のような構成となっております。

  • 1シート目:「施策」「KPI」のみを記載
  • 2シート目:「施策」「課題」「なぜ有効か」「KPI」を、コスト削減に収束するように記載
  • 3シート目:「施策」「課題」「なぜ有効か」「KPI」を、クラウド利用率向上に収束するように記載

シート内の「大分類」はJagu’e’rで掲載された「CCoE 連載 Vol. 7 CCoEのこれまでとこれから(2)」を参考とし、また各施策についてもCCoE研究分科会のメンバーからアイディアを募って作成しました。

これらを参考に、どのような施策があるのか、何をKPIとするのか、どのようなアプローチになるのか、等の理解の向上や実際の施策検討にお役立てください。

【配布用】CCoEの施策とKPI策定例一覧_CCoE研究分科会

 

終わりに

CCoEにはそれぞれの組織に合わせた役割や特色があり、課題もそれぞれです。しかしその中にも共通的な悩みがあることを、他社様のCCoE構築支援やCCoE研究分科会での交流を通じ実感いたしました。本記事がそのような方の課題解決のための一助となれば幸いです。

 

Jagu’e’r CCoE研究分科会
安木徹也(デロイト トーマツ ウェブサービス株式会社)

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