開催報告_ Google Cloud エンタープライズユーザー会 特別座談会(2021年6月2日)

Jagu’e’r 事務局の浅沼です。6月2日に Jagu’e’r初の非会員様も参加できるイベント「ITリーダーズ座談会」を開催しましたので、その模様をレポートしたいと思います。

今回は座談会形式で、各界のITリーダーの方々(と、Jaguerアンバサダーを努めていただいている坂井真弓さん)にクラウド活用に関する潮流や、各社の課題、そしてコミュニティに対する想いを語っていただきました。 アーカイブも公開されていますので、気になる方はぜひこちらを御覧ください。

ご登壇者 

ヤマハ発動機株式会社 青田 元 様

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 山中 崇広 様

株式会社MonotaRO 普川 泰如 様

Japan Google Cloud Usergroup for Enterprise アンバサダー 酒井 真弓 様

グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 泉 篤彦(モデレータ)

 

本記事では、座談会でのやり取りを少しだけご紹介します (以下 敬称略)。

 

テーマ1 / クラウド導入の成功パターン・失敗パターン

 

酒井:「成功するクラウド導入」と「失敗するクラウド導入」に法則のようなものはあるでしょうか?

 

山中:体系化されているわけではないですが、経験則ではなんらかの共通点があるような気がしています。クラウドにはオンプレミスにはないリスクがあるので、それらを理解して、コントロールできる体制ができているかが大事なように思われます。 具体的にはCCoE (Cloud Center of Excellence) などの組織を立ち上げて推進しているか、と言った点が上げられます。 更にいうと、CCoEのメンバーの中に Digital Transformationやクラウド活用に対する熱い熱意やモチベーションを持った人がいるかどうか?が成功の鍵かもしれません。もちろん彼らをサポートするために経営層の巻き込みも必須です。

 

酒井:クラウド導入時のセキュリティについては、どのような相談が多いのでしょうか?

 

山中:なにを相談すればよいのかわからない、という状態の方がまだまだ多いように感じます。ですので、一般的にクラウドを導入した際に想定されるリスク一覧のようなものを用意しておき、それらを説明するところからスタートすることが多いです。

 

普川:セキュリティとスピードはトレードオフの関係にあるので、あまりギチギチなセキュリティを強いてしまうとクラウドの良いところが削がれてしまう。 MonotaROではセキュリティを考える際に、セキュリティガードレールを意識した。なるべく自由に使わせつつも、たとえば高額な利用料が発生するサービスについては利用を検知して止める、などの措置を施している。

 

山中:従来のIT組織は細かい単位でサービスの利用を制御するゲートキーパー型が一般的だったが、クラウドの世界ではガードレール型も必要になってくる。どちらが良い・悪いというわけではなく、併用しバランスを取ることが重要だと思う。

 

青田:こういったセキュリティのルール設定をしている人は、とても重要な仕事をしているのに社内ではなかなか認められない。その人達を積極的に認知してあげる取り組みがすごく重要。社内がオフェンスチーム・ディフェンスチームみたいに分断されてしまうと、その間にテンションが発生してしまうので、いかにしてワンチーム化するかが重要。

テーマ2 / カルチャー変革

 

酒井:会社のカルチャー変革についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?


普川:MonotaROは会社がどんどん成長しているので、その成長に合わせて自然とクラウドを受け入れているような印象がある。一方で新しい人材がどんどん入ってきているので、昔から会社にいる人と、新しく入ってきてくれた人との間で会社のビジョンをどう共有していくか? がこれからのチャレンジだと考えています。


酒井:MonotaROでは問題をあえてすぐには解決しない、という話を聞いたことがあるのですが本当でしょうか?


普川:なにか問題が発生した時に、それだけにフォーカスしてしまうと、次に似たような問題が発生した時に同じ対応を取らないといけなくなります。なのでなるべく仕組みに落として解決する、というのがMonotaROのカルチャーかもしれません。目の前の課題をなるべく長期的な目線で解決したいということです。

 

テーマ3 / マルチクラウドってどうかな?

普川:マルチクラウドをしたかったわけではなく、業務的にやりたいことを実現するためにその時々で最適なプラットフォームを選択した結果、マルチクラウドになっていったというのが実際のところ。MonotaRoの場合は、BigQueryを使ったデータ分析というコンテキストが中心にあり、そこにシステムを寄せていく、寄せるにあたってコンテナなど最新の技術を使っていく、という流れでGoogle Cloudの利用が加速していった。ただ、全部Google Cloudと考えているわけではなく、それぞれのクラウドの良い部分や向かない部分を理解して使い分けることが重要だと思っている。


酒井:これからクラウドを利用開始するユーザーさんは、マルチクラウドを前提にプランを立てていったほうが良いのでしょうか?


普川:まずやりたいこと(業務)を考える点からすすめるのが良いと思います。その結果がマルチクラウド(様々なプラットフォームの良いところを活用する)というケースが多くなるのではないでしょうか?


山中:金融機関とかのお客様の場合ですと、特定プラットフォームへ依存を避けるために最初からマルチクラウドを前提にするというケースもあります。マルチクラウドを前提にすると、2重投資となる部分が必ず発生するので(FISCチェックリストの2重管理、複数クラウドへの専用線)その点がすすめる上でのネックになるケースが多そうです。

 

テーマ4 / ユーザー会ってどんな感じ?

 

青田:最初GCPユーザ会の話を聞いた時、「なにそれ?」と思った。ソフトウェアを提供している側からユーザー会をセットアップするという取り組みに正直違和感を感じた。ただ、実際参加してみると思いの外議論するテーマが沢山あって、様々な立場の人たちが議論している様子は非常に楽しいなと感じている。 普通に会社員をやっていたら絶対に出会うことがないはずだった人たちと、クラウドという仕組みでつながるというのはなかなか面白い体験だと思う。 そして、各社のIT人材がそれぞれの会社で一生懸命やってきた内容を発表する場があるというのは、彼らの熱意にはずみをつけてくれる。


普川:業種によって色々考え方が違うんだな、という気づきが得られるのがすごく良い。今後はGoogle Cloudに対する機能のリクエストをユーザー会としてまとめて上げていきたいと考えている。


山中:いろんな立場の人たちから色んな意見をもらえるのが良い。また、第1回総会で、Google Cloudの中井悦司さんの話が聞けたのもとても良い経験だった。


酒井:IT技術によって会社や組織を変えようとしている人たちを応援したいという気持ちでいつも取材にのぞんでいます。この会に参加していると、応援したい人が増えて、それがとても楽しいです。

 

おわりに

座談会という取り組みはJagu’e’r初ということもあり色々と準備に手間取りましたが、登壇者の方々をはじめ多くの皆様のご協力で今回開催にこぎつけることができました。この場をかりてお礼申し上げます。 当初は録画スタイルでという案もあったのですが、結果的にライブにしたことで臨場感のある良いイベントになったのかな?と思います。次回はオンサイトで是非開催したいと思います。