活動報告: データ利活用分科会 第一回イベントレポート

2021年8月2日 17:00、データ利活用分科会として初めてのイベントが実施されました。

分科会となって初めての今回のイベントは、演題2本、LT2本の構成にて行われ、たくさんの人にご参加いただいたと共に、非常に素晴らしい発表のおかげで、イベントとしては成功を納めました。

発表いただきました、

  • 大阪ガス 岡村様、國政様
  • ヤマハ発動機 藤井様
  • オープンハウス 中川様
  • アサヒ 清水様

本当にありがとうございました!
本稿では、イベントの模様をご紹介したいと思います!

演題のご紹介

演題1. 大阪ガス株式会社 岡村 智仁 様, 國政 秀太朗 様
「大阪ガスの DX 推進」

Daigas グループが、取り組んでいる様々なイノベーションに関するご紹介をいただきました!!

大阪ガス様がそのようなイノベーションに取り組む背景としましては、電気ガス自由化により、コスト競争が激化。
大阪ガス様としては、単なるコスト競争ではなく、他社にないサービス展開から顧客獲得を目指しているそうです。

そのために大阪ガスではイノベーション推進本部を立ち上げていて、発表者のお二人は、情報通信部 ビジネスアナリシスセンターというところで、全事業部向けにデータ分析活用のソリューションを提供しています。

この、ビジネスアナリシスセンターが掲げるミッションとアクションは以下。

ミッション

高度な分析力と専門力を武器に、他社が容易に追従できないソリューションを創出し続け、会社内でも非常に大きく利益貢献し、革新的な経営資源となる

アクション

  1. 分析課題の発掘
  2. ビジネスを意識したデータ分析
  3. 導入

岡村様によると、

「ただ、データを分析するだけでは誰もアクションしてくれない。データ分析の出口は、これまでの業務を変える、もしくは新しい業務を追加するが殆どなので現場の抵抗を乗り越える必要がある。それらの壁を乗り越えて業務にいかせるようになるまで支援することが大事。」

といった点から、3番目のステップが一番重要。

確かにその通りですが、現場を巻き込みながら変えていくプロセスがなんだかんだ一番体力のいるところ…
意識して実践されて、しっかりと実現されているところがすごいですね!

そんなビジネスアナリシスセンターでは以下活用事例が動いています。

仮想発電所(VPP)


大阪ガス様で制御可能な分散電源をクラウドで制御することで1つの大きな発電所のように運用している。

2020年、1500台の燃料電池をテスト運用し成功しているそうで… (実証実験のプレスリリース

また、今年はその倍の3600台での実証を行うようです!(プレスリリース

最大10万台を扱えるようなシステムを構築することを目指しているそう。
今後、ますます期待が寄せられるプロジェクトです。

設備の故障予知


さすが大阪ガス様、固定資産だらけ!(船とかタンクとか工場とかパイプラインとか…)

ただ、以下にそのライフサイクルをいかに伸ばすか、稼働率を高めるかによって1%変わるだけでも数100億の話になるのだとか…

それらの管理にもアルゴリズムから現場用 Web アプリケーションまで GCP を活用しているそうです!

新規事業アプリ

大阪ガス様、SNS アプリケーションも作ってます!

  • taknal
    • すれ違いの本紹介アプリ。
    • すれ違いでお互いのおすすめの本を紹介しあえるアプリケーション
  • ラムネ
    • 10秒ででき気持ちの切り替えをシェアし合うアプリケーション
    • みんながリフレッシュするためにやっていることを投稿し合うプラットフォームになっている。

私も早速インストールさせていただきました!
taknal は、2日間で10数万ユーザーが増えたこともある、バズりも見せているアプリ!

本業の方での事例も素晴らしいものでしたが、そんな素敵なアプリも作っているなんて驚きですね。

大阪ガス様、ありがとうございました!

演題2. ヤマハ発動機株式会社 藤井 北斗 様
「製造業におけるデータ分析事例紹介」

ヤマハ発動機様からは製造業におけるデータ利活用事例と、データ分析を民主化してくために展開している社内教育事例をご紹介いただきました。

ヤマハ発動機 藤井様の所属するデータ分析グループでは大きく、

  • スマートオペレーション
    • 業務のデータ
  • コネクテッド
    • スマホ経由で繋がる製品のデータ
  • デジタルマーケティング(お客様のデータ)
    • 顧客データ
    • 購買データ
    • Web の行動データ
    • アンケート

の大きく3つのデータを横断的に扱っているそうです。

そんなデータ分析グループでは、「ヤマハ発動機を、データを当たり前に使いこなす会社に変える」を Vision として掲げ、

  • データを分析し、意思決定とそのアクションについて、「企画提案から事業貢献実現まで」を事業部門と併走で実行する。
  • 現場から経営層までを対象にデータ分析の民主化を図る。

を Mission として日々取り組まれているそうです。

そんなヤマハ発動機様はいろいろな事例をお持ちなのですが、今回は営業マーケティングと製造における事例を紹介いただきました。

営業マーケティングにおけるデータ利活用

ヤマハ発動機様のお客様はの7,8割の方は、Web サイトから関心を持ち、試乗し、購買まで至る方が多いようです。またその行動を、Treasure Data で収集し、BigQuery で処理することで分析しているそう。

また、そのデータとこれまでの購買履歴から AI で顧客がどのくらいの確率で購入するかを各顧客ごとでスコアリングし、ディーラーに訪問予約のお客様のスコアを提供しているのだとか。

この、Web 行動履歴から顧客スコアリングまでのシステムはインドで絶賛稼働中。

そして、B2B 営業向けに離反しそうな顧客を検出し、フォローするシステムを構築して、実証している段階にあるそうです。
こちらは、営業日誌や営業履歴から購入頻度、間隔、価格によって離反顧客の検出や、自然言語処理によってお客様の声がポジティブなものかネガティブなものかを判別し、ピンポイントで策が取れるようにする…

効率よく営業が行えそうな素晴らしいシステム…!
アナログからデジタルまでデータというデータを最大限活用されているなと思いました!

製造におけるデータ利活用

藤井様が仰るには、製造におけるデータ分析のステップには大きく3STEP、

  1. データの結合、可視化
  2. 現在起きている状態の検知
  3. 未来予測

今回は、STEP 2までの段階をご紹介いただきました。

製造におけるデータ利活用: データの結合について

ヤマハ発動機様の製造現場では、複数の作業工程それぞれでデータを持っているので、まずはそれを取り出しやすくするために結合し、問題が起きた場合にピンポイントで取り出し易くするところから始めたとのこと。

また、「現場の方が自分でクエリ文を書き、データを取り出すようになった」という点には非常に驚きました。
全員がテクノロジーを活かせるように民主化しているところもすごいですね。

製造におけるデータ利活用: 現状の可視化

STEP.1 で集め、可視化したデータから現状の可視化として以上の2点の具体的事例を紹介いただきました。

1つ目は要因分析として、船のエンジン部品の製造における日々の改善活動を行えるようなシステムを構築。

2つ目は波形の異常検知より設備異常や不良品検知を行っている事例。

データ分析の民主化活動

ヤマハ発動機様では2018年より社内教育活動を実施。

今ではレベル別に入門からデータ分析のスペシャリストを育成する研修まで9講座+OJT形式が用意されているのだとか。(私も受けたい…!)

しかもこれが内作だそうです。すごい。

ヤマハ発動機様がこういった研修の内製化を進める理由としては、

  • 社内分析事例は社外には売ってない。
  • データをどこから入手するか、どう扱うか、そこは内製化でしか達成できない。
  • 社外に関してはキラキラした大きな成功事例しかなく、うまくいかなかった、失敗も含めて社内に積み重ねる

といった点があると仰っていました。

「社内分析事例は社外に売っていない」確かにその通りだと納得しました。

つい、答えをすぐに求めがちですが、小さく始めてどんどん積み上げる。
蓄積させて大きくする。そのためにはアクションは早いほうがいい。

ヤマハ発動機様の発表からは、藤井様の部署や周りのフットワークの軽さ、仕事の速さが伺えて、社内にデータ分析を広めるという強い意思を感じました。

ありがとうございました!

LT のご紹介

LT 1. 株式会社オープンハウス 中川 帝人 様
「BQ+GWSによる情報分析基盤の刷新」

オープンハウス様は、東京、名古屋、福岡など主要都市で強い総合不動産業者。

また、今回登壇いただいた中川様は「データサイエンティスト養成読本」の著者です。

データを使ってより安く、より早く作る。

不動産業者では、購買情報などに関してはあまり「ビッグデータ」と呼べるものはないが、家が建つまでに書類や文書が非常に多く、工数削減のために機械学習を活用しているのだとか。

今回は Google Workspace と GCP を活用した ETL(Extract, Transform, Load), BI(Business Intelligence) の実装についてお話しいただきました。

オープンハウス様での必要要件とアーキテクチャ

オープンハウス様内で必要だった要件は以下だったそうです。

  • 複数の会社に横断して使用できる(BI, ETL)
  • 従来のライセンス制はコストが人が増えるにつれて増加する。ユーザーが増えてもコストが増えない(BI, ETL)
  • 元々Google Spreadsheet を活用しまくってたので連携は必須(BI)
  • データの更新を各自が好きなタイミングで行えるようにする(ETL)

そこで、ユーザーが Cloud Function でコマンドを叩くか時間トリガーで実行される追加処理を行うことで Source Data Base から BigQuery やSpreadsheet にデータが読み込まれる仕組みを形成していました。

シンプルだけど非常に強力で使いやすそうでした。
全てが Google のサービスで作られているので認証部分に関してもめちゃくちゃ楽なのだとか。

このシステムを導入して、

  • お金が掛からなくなってユーザーを増やせるようになった
  • 対応時間が1日単位から30分単位になるくらい楽になった
  • 作業工数が1日あたり半分になった

以上のメリットを得たそうです。凄まじい効果ですね。

アーキテクチャもシンプルでわかりやすかったので、いろんなところで参考できそうでした!

中川様、ありがとうございました!

LT 2. アサヒグループホールディングス株式会社 清水 博 様
「製造業におけるデータ分析事例紹介」

アサヒ様は事業利益の4割強を海外で得ており、ヨーロッパ地域とオセアニア地域が強い。また、全世界で見ると207社71工場で総従業員数はのべ30,000人を超えて来ている。

そんな中で、「日本のやり方だけでは世界に通用しない」と、デジタル化を進めているそうです。

アサヒ様のデータドリブン

「データドリブン」、最近は経営や人事など、いろんな部署も敏感に反応するようになっているワード。

以上では、アサヒ様の考えるデータドリブン思考について解説していただいています。

勘や経験でやっていた部分をデータで実証することにより、これまでになかった意思決定を行っていく、というのがデータドリブン思考。

ただ、やはり勘と経験でしかできない意思決定もまだあると感じる部分が多く、この辺りは葛藤がある部分なんだとか。

この辺りは非常に難しい問題ですよね。

アサヒ様事例

アサヒ様でも、従来より全国の卸業者の売上データを活用した意思決定は行ってきていて、ただシステムとして、古い仕組みで中身が変わらずただお金がかかっていたという部分に、「このままでいいわけではない」と思い、刷新に踏み切ったそうです。

刷新にあたっては、期待を超える価値を作りたいというビジネス側の想いを元に以下要件を入れ込んだ。

  • 消費財市場の変化、ニーズとサイクルの短期化多様化に対応し、いち早く市場ニーズを発掘する
  • 棚提案でアサヒの商品を入れ込み、尚且つ小売の売上も伸びるような Win-Win の提案がしたい

また、システム運用に関しては IT 側に、既存運用のコストがかかりすぎている。投資できるお金が少ないので安く構築する。というところを目指したそうです。

構築されたシステムがこちら。これまでの演題、LT でもそうでしたが扱っている DB が非常にたくさんあるわりに非常にシンプルに統合して構築できていますね。

今後も改善を続けていく予定だそうです。

清水様、ありがとうございました!

全体を通して(勘と経験 VS. データ分析)

今回のイベントでは、新価値提供、従来業務の最適化、工数低減に至るまで様々な事例を紹介いただくと共に、各社の教育体制や組織をどう変えていきたいかという想いを聴くことができて非常に楽しかったです。

全体を通してですが、今回は意思決定を行っていく部分で、「勘と経験」というワードが見られました。

また、意思決定をどっちで行っていくべきか、データから行うのは確かにもっともらしいし合理的だけど、勘と経験という部分も捨てきれない。

そんな想いを誰しもが抱えているのかなと感じました。
この辺りはチャットでも盛り上がっていたのですが、私としてもどちらか一方だけ、ではなくて両方大事だしその双方をうまく組み合わせていくべきと考えます。

  • 「勘と経験」で考えたことをデータから実証する
  • データからの結果を「勘と経験」で考察する

データドリブンを推進するというのは、単にデータを分析していくことではなく、その人のものに対する知識や経験が組み合わさってこそ成り立つものであると思っています。

みなさんはどう思われますか?この辺りも今後のイベントで話題にできたら面白いかなぁと思います!

そんな大盛況で終わったデータ利活用分科会第一回イベントなのですが、早くも第二回が計画されています!!

10/14(Thu) 12:00 – 13:00 Lunch & Learn !! 乞うご期待!!

また、本記事を読んでいただき「参加したい!」と思っていただいた方も、このタイミングで Jagu’e’r 及び、分科会への参加、また、演題提供大歓迎でございます。

ぜひ、お気軽にお問い合わせください。