活動報告: ヘルスケア分科会 第3回イベントレポート

みなさまこんにちは!ヘルスケア分科会のMeetupも5月26日に第3回を迎えることができました。今回もヘルスケアに携わっている企業の皆様から、Google Cloud のテクノロジーや Fitbit に関連した事例などをLTをしていただきました。

そして、今回はちょっと変わった趣向として聴講している人も健康になっちゃおう!という企画も取り入れてみましたので、最後までお付き合いください!

WEMEX(旧PHC) / 橋本 吉治様 「ヘルスケア業界における Google Cloud 事例」

最初のLTはWEMEX株式会社の橋本さんによるLTです。4月に旧PHCのメディコム事業部などが統合されてできたPHCグループの新しい会社だそうです。

今回はまだPHCという社名であったときに発表していただいた内容をご紹介いただきました。

旧社名であるPHC株式会社のメディコム事業部というところでは、電子カルテやレセコンシステムを取り扱っています。これらは主力製品で、医療IT業界では当然ですが、デスクトップアプリでクラウド化されていないそうです。

そんな中、ビジネストランスフォーメーションセンター(以下BXセンター)という新設部署で、クラウド型の電子カルテを運用していこうという話が挙がっていたそうです。そこへ2021年4月にきりんカルテというクラウド型の電子カルテサービスの事業譲渡もあったということで、運用の課題などに取り組む必要があったそうです。

もともと、きりんカルテは Google Cloud 以外のクラウドで運用されていたわけですが、Google Cloud に移行する前には次のような課題があったそうです。

一つは属人化の問題です。
きりんカルテのインフラに関しては、事業譲渡のタイミングで残られた、あるいは辞められたエンジニアにノウハウ集中していたため、その人がいなければわからないという問題です。

もう一つは社内のインフラエンジニアの育成です。
また、先に挙げたBXセンターが設立間もないというところで、インフラに携われるエンジニアが少ないという問題です。

しかし、BXセンターでは、このきりんカルテの移行を題材にして、きりんカルテ自体のITガバナンスの回復と、きりんカルテ以外にもこれから行っていくチャレンジに備えた内製化の準備として取り組もうと考えたそうです。

橋本さんはさらっとお話されていましたが、属人化が進んでいるシステムを対応できるエンジニアがすくない中でやっていこう、ついでだからエンジニアも育てようというチャレンジ精神は素晴らしいですね!

きりんカルテは元々は Google Cloud 以外のクラウドで稼働していたそうで、本番とステージング環境を持っていました。

アプリ部分についてはPHCのメンバーが対応する予定でしたが、インフラ部分については橋本さん達だけでは対応が難しいということで、Google Cloud パートナー企業S社様とGoogle のコンサルティングにも入ってもらって移行方針などを相談したそうです。

そして、ステージング環境の移行時にはGoogle Cloud パートナー様が主体で、PHCメンバーが入りつつインフラを学び、本番環境の移行については、なるべくPHCメンバーだけでやりきろうという方針で、パートナー様にはアドバイスという形で実現したそうです。

クラウドの理解がまだ浅い時期にはこのように伴走してくれる会社さんと一緒にやって自分たちでしっかり学ぶというパターンは成功の近道ですね。

Google Cloud 以外のクラウドから移行した後のアーキテクチャにはあまり大きく変化はせず、元々仮想マシンベースだったものも、若干のチューニングは入れつつそのまま移行したそうです。

とはいいつつも、前後の比較表を見せていただくと、一般的にクラウドとしてあるべき姿にしつつ、BigQuery や IAP など、Google Cloud ならではのサービスもしっかり利用しているという印象でした。

移行前には、それまでの開発経緯から複雑化してしまったネットワーク構成に課題があったそうで、それを単純化する必要があったそうです。

そこで、グローバルロードバランサーを採用したり、サブシステム単位で専用のサブネットを作成するなどの対策によって運用管理を省力化し、影響度の波及を小さくすることができたそうです。

また、それまでは、VM に SSH でログインして行っていたメンテナンス業務などを、Terraform や Ansible を用いて IaaC 化し、運用業務を Cloud Build にまかせるという事を行ったそうです。

やはりそれなりの学習ハードルが当初にあったようですが、一度作ってしまえば、結果的には便利!という評価に変わっているそうです。

属人化を排除するには、何をやったのかが分かる仕組みを提供するというのは重要ですね。

最後にお話してくれたのは、社内のインフラ部隊で本番環境の構築を実現できるようにしたというお話でした。BXセンターでは内製化を見据えて、Google Cloud パートナー企業S社様から丁寧にトレーニングやドキュメント化などのスキルトランスファーを受けたそうです。

その結果、BXセンターでその後に立ち上げたいくつかの新しい SaaS はすべて自分たちの手で運用ができるような体制になったとのこと。

一つの経験を通じて学び、しっかりその後のビジネスにつなげていけているというのは素晴らしいです!

このようにして、きりんカルテは Google Cloud に移行して、その結果、コストダウンやユーザー流入の増加にもつながったということです。

またそれだけではなく、こうして対外的な発表を橋本さん達が行う事で、Google Cloud に明るいエンジニアが新たにジョインして、さらに技術面で強化できたという効果もあったようです。

きりんカルテは、クラウド型の電子カルテということで、医療業界特有の制約も多いと思うのですが、こうした橋本さん達のチャレンジによって、より多くの医療機関が利用できるようになり、結果として受診者側にも多くのメリットが出てくることを期待しています。

発表ありがとうございました。

(株式会社エヌデーデー / 関口貴生)

Fitting Cloud / 岡本 和也様 「大規模病院における患者案内システム事例」

続いて、Fitting Cloud 岡本さんより、アプリを用いて病院の案内システムを刷新された事例をご紹介いただきました!

岡本さんご自身は、大学病院の医療情報企画部ご出身とのこと、実際の病院内部のお悩みを熟知されていそうです。

そんな岡本さんが解決しようとした課題はこちら!!

「病院の中で番号札を渡されて、どこそこ行って、お待ちくださいー」ありますよね。

病院が大きいと患者さんも多く、自然と待ち時間も長いので、診察は30分しかないのに合計で2時間以上かかった思い出があります。

そんな外来患者の案内にアプリを利用することで、既存の業務フローを変革されたのですね!!

まずは、このアプリを導入した狙いについて教えていただきました。

アプリ導入のメリットは、患者と職員の双方にあります。

患者からすると、待ち時間が減らせます。大きなメリット!

会計待ちまで不要にできるなんて、素敵ですね!!

一方で、職員からすると、従来の案内にかかっていた時間が不要になります。

アプリが対応してくれるので、他の作業に時間を充てることができます。

アプリを用いた外来案内を体験する

当日のLTでは、実際のアプリ利用の流れについても、ご説明いただきました!

まずは患者さんが病院に入ると、自動で「受付しますか?」と通知が上がってくるそうです。

待合室に患者さんがいることはシステム側で把握しているため、待機中の患者さんを診察室にお呼びします。

そして、何より支払いが最強です。

現地清算のほかに、クレジットで支払うことができます。

クレジットで払うオプションを選ぶだけで、診察室から自宅へ直帰できます。

窓口に立ち寄る必要がありません。

領収書もメールで送ってもらうことができるため、便利ですね。

後日、会社などに提示が必要な皆さんも、これで安心ですね!

病院に行ってやることは診察だけ!!

これこそ、本来の病院の姿だと感じてしまいました。

職員から見たアプリ画面

一方で、職員側の画面はどうなっているのでしょうか。

予約変更画面を見せていただきましたが、職員の仕事は予約変更だけでも大変なのだそうです。

お客さんの命を預かる医療現場では、診察と検査の順番など、複雑な前後関係があります。

そこで、患者さんから日程変更の希望電話があっても、変更可否を判断するために確認すべき事項が複数あります。

患者さんからの電話はリアルタイムな対応が必要なため、すぐに可否を判断できると、患者さん・病院双方にとってのメリットですよね。

システム構成図

実際に Google Cloud を用いた構成図に関しても、ご紹介いただきました。

やはり気になるのは、病院ならではの厳しいセキュリティ!!

当然ですよね、医療情報流出など、絶対に避けたいです。

そんな要件に即した工夫まで、しっかりされています!

他にも、法令順守の観点から対応したガイドラインをご紹介いただきました。

厚労省に加えて、新しく経産省や総務省からも安全管理ガイドラインが出ています。

クラウドを利用するうえで、SLA の考え方は必須ですよね。

リスク発生時の対応について、医療機関と合意を取ることが大切とお話されていました。

Google Cloud も注力する SRE や DevOps の考え方も考慮したうえで、新しい仕組みを作っていくことはチャレンジングですよね!

以上、大病院における外来案内の業務フローをアプリで変革された、大変勉強になる事例をご発表いただきました!

私自身も聞いていて、これまでの病院のあり方を覆すような、とても意味のある一手を打たれているに違いないと感じました。

当日の質疑応答では、Bluetooth ビーコンはどの程度設置されたのか、という質問が寄せられました。

この質問に対しては「一つの病院で140台導入した。一台1万円程度で導入でき、外来患者向けなので入院患者用の病棟には設置していない」とご回答いただきました。

他にも、個人的には「アプリを導入することによって、アプリの操作が苦手な高齢者への配慮は?」「会計待ち列がなくなるのはよいが、本当に会計すっぽかして帰宅されたらどうする?」など、様々な懸念・ご意見が導入前に寄せられたのではないか、と想像してしまいました。

これだけの大きな変革だからこそ、どうやって関係者と事前交渉していったのか、詳しい話をぜひまたの機会にお伺いしてみようと思います。

岡本さん、素敵な発表をありがとうございました!!👏👏👏

(アクセンチュア株式会社 / 秋元 良太)

ヘルスケア分科会特別企画「座ったままできる!ピラティスエクササイズ& Googleマインドフルネス」By Chieさん

さて、LTを2つ終えたところで、今回の ヘルスケア分科会ならではの特別企画、Chie さんによるピラティス体験セッションです!

ところで、ピラティスって開発した人の名前だったんですね・・・知らなかった

Chie さんは Googler でありながら、副業で10年近くフィットネスインストラクターもやり、また、Google では gPause という社内のマインドフルネスプログラムの講師もされているそうなので、しっかりとしたセッションになりました。

ピラティスを続けてやっていくと次のような効果があるそうです。

  • 胸式呼吸による活性化
  • 体幹が強化されて姿勢改善
  • 集中力アップ

さて、いよいよ開始です!

手を組んで腕を伸ばします。そして左右にゆったり動かしたり、

腕を頭の後ろに組んで、ツイストしたり、前屈みや、後ろにそる動作、呼吸が大切だそうです

胸式呼吸で呼吸をしながら、ボディスキャン瞑想という体の内部に意識を向けていく瞑想を行います

ゆっくり呼吸をしながら、背骨の曲げを意識して体を横に曲げます

そして、腕を上に伸ばした状態から、胸を反りながらゆっくり肩の位置まで肘を曲げ下ろすショルダープレス

腕を伸ばしてゆっくり手を体の横で上げ下げしていきましょう。手が上に来たとき、背骨を伸ばす感覚が大事だそうです

最後は再び手を組んで上に伸びる動作です。最後まで呼吸と背骨を意識しましょう。

筆者は五十肩なので、後半の動作は辛かった(痛かった・・・)のですが、皆さん無理のない範囲で動かしましょう。

ほんの5分ほどの動作でしたが、肩や背骨が伸びてすっきりした感じがしました!

座ったままできるので、オフィスでも在宅ワーク中でも気分転換にやってみてはいかがでしょうか?

(株式会社エヌデーデー / 関口貴生)

イサナドットネット / 長谷川 万里様「Fitbitバイタルデータ ソリューション事例」

最後のLTテーマは、イサナドットネット株式会社の長谷川さんの発表です。長谷川さんからは、Fitbitバイタルデータのソリューション事例として、特にFitbit Web APIの活用についてお話しいただきました。

長谷川さんのイサナドットネットでは、ヘルスケアテックを中心に社会課題に取り組み、人間中心の社会の実現を目指いしてるそうです。ヘルスケア×ITを中心として、ソフトウェア開発、情報システム開発や運用を行っているそうです。

ヘルスケアテック事例として、Bismhub、遠隔医療、AMED事業、PHRの4つを挙げていただきました。

Bismhubは、バイタルデータをリアルタイムで表示する管理ダッシュボードのパッケージだそうです。

遠隔医療では、遠隔診療に必要とされるビデオ通話機能を提供しているそうです。

AMED事業では、遠隔診断の実証研究が技術開発事業に採択されているそうです。

PHRは、患者や家族が医療記録を確認できるアプリケーションを開発されているそうです。

Fitbit APIを使用した健康管理ダッシュボードの開発を通して、多くのFitbitの魅力に気付かれたそうです。

一つは価格が手ごろな点で、臨床研究用に大量購入も可能なメリットがあります。Webベースで利用可能なAPIが多数公開されているのも魅力であり、取得可能なデータが豊富です。社内でFitbitを試した際には、「睡眠スコア」や「解説のテキスト」などが表示されるのが好評だったそうです。私もFitbitを利用していて、睡眠スコアを参考にして生活改善を図っており、確かに有効だと感じています。

次に、実際に作成された健康管理ダッシュボードについて説明いただきました。

ダッシュボードでは、従業員に配布したFitbitの情報を一覧で見られるようになっています。睡眠に関する情報、座っている時間、総消費カロリー、アクティビティ、移動回数・距離など多彩な情報が確認できます。絞り込みの機能も充実しており、従業員の属性で絞り込んだり、健康指標が未達な人などを抽出したりできます。

個人ページも用意されており、詳細な情報が確認できます。

次に、システム構成について説明いただきました。Fitbitと連動しているスマホアプリから、定期的にクラウドにデータがアップロードされ、そこからWeb APIでデータを抽出しています。健康管理ダッシュボードはFirebaseのSaaSを使用しているそうです。ActivityなどのAPIを使用しているそうですが、1分単位の細かいデータが取得可能とのことです(Intraday)。

Activity APIは、活動レベルが取得できます。座っている/歩いているなどの状態を数値として1分間隔で取得、集計することで1日の活動量がわかります。

Sleep APIは、睡眠レベル(深さ)を取得できます。30日平均のデータも取得でき、昨夜の睡眠と比較することができます。日々の睡眠改善には、平均データと照らし合わせることは有効かもしれませんね。

本ダッシュボードの今後の展望として、Fitbit Web APIのSubscriptionを使用したリアルタイム性の向上を考えられているそうです。データ変更時に通知が受け取れるので、着用ユーザの今の状態が把握できるようになるとのことです。また、長期間のデータを分析できるような見当もされているとのことです。変調を改善するための働きかけに活用することを期待されているそうです。

Google Nest Hub 2を活用することも検討されているそうです。Fitbitの場合、睡眠中は外したいという方もいるとのことですが、Google Nest Hubのもつ睡眠モニター機能を知使うことで、ベッドの横に置いて睡眠レベルを記録できます。私もFitbitを長時間着用すると皮膚が赤くなったりすることがあるので、このようなデバイスの活用が選択肢に増えると重宝する方がいるかもしれません。

ヘルスケアテックにおいてデータの取り扱いは非常に重要ですので、情報共有していただき大変参考になりました。ありがとうございました。

(株式会社エヌデーデー / 泉啓太郎)

ということで、第3回真面目な事例LTもあり、心身をリフレッシュするピラティスありと盛りだくさんでお届けしました。

気がつけば、1時間半のリアルタイムイベントにもかかわらず、多くの皆様に最後まで視聴していただけました!ありがとうございました!

最後はお馴染みのJagu’e’rポーズで閉会!

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次回予告

次回の第4回は7月7日(金) 12:00 からランチタイムに開催します!

是非ご参加お待ちしております!

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