活動報告: ヘルスケア分科会 第1回イベントレポート
みなさまこんにちは!今回からついに始まりましたヘルスケア分科会!ヘルスケア分科会では AI 診断から健康経営まで幅広くヘルスケアな話題を取り上げていく予定です。ヘルスケア業界といえばまだまだアナログな部分も多く、デジタル技術の活用のしがいがある一方で、世界各国で特にデータの取り扱い、品質に関しては厳しいレギュレーションも存在する、非常に難しい業界です。
ただ、近年は間違いなくヘルスケア×デジタル技術の潮流がきているっ!!この記念すべき第一回 meet up でもそれを確信しました。それでは演題のご紹介をどうぞ!!
Google / 加山 博規様 「GoogleのAI 医療・健康関連の事例」
記念すべき第1回ヘルスケア分科会の1つ目のテーマは、Google AI for Japan 加山さんの発表になります。
GoogleのAI技術をいかにHealthcare領域で活用しているか、その取組についてお話しいただきました。
本テーマのキーワードは「世界中の人々が平等公平に情報にアクセスできる」です。
まさにデータ活用の理想ですし、Googleさんだからこそ実現ができるビジョンだなと思いました。
また、なぜGoogleがHealthcare領域に携わっているのか大きな理由の一つが、「ユーザーニーズ」です。
なんとGoogleで検索されているクエリの多くが「医療健康に関する事柄」と非常に多くの需要があることがわかります!
取り組みの1つ目としては、「Public Health領域」からCOVID‐19感染予測モデルになります。
慶応義塾大学の宮田先生監修でも話題になりました。皆さんもお世話になっているかなと思います。
こちら過去に、オープンデータのみを用いて、先28日間の感染者と死亡者の予測を公開していました。。
まさに公平なデータの活用事例ですね。
特徴的な部分は、医療体制や人種・地域の格差によってアクセスできる情報に差が出ないように公開されていたとのこと。
承認が必要な機関や考慮が必要な事柄(地域制・人種・文化)は膨大でしょうし、そんな分析結果を感染拡大開始から半年弱で公開されたスピード感に改めて驚愕しますね!
2つ目の取り組みは、「Clinical Health」:がん検診のスクリーニングなど画像データの機械学習モデルです。
臨床医療はもちろん、基礎研究にて新たな知見を見つけることにも取り組まれていました。
- 臨床医療:海外で開発された学習モデルを日本人にも適応検証を進めており、マンモグラフィからAIが乳がんの早期発見に繋げています。
- 基礎研究:創薬に関わる「タンパク質3D構造予測」、細胞を傷つけることなく画面上での染色を可能とする「バーチャル細胞染色」など、このような領域にも取り組まれているとは!いい意味で予想外でした。
3つ目の取組は、「Consumer Health」:ユーザーの皆様の日々の生活を支えるためにウェアラブルデイス「Fitbit」での健康情報を分析するサービス等で適切な情報を届けており、健康寿命の延伸や健常者のQOL向上にも取り組まれているんですね
Fitbitについては、次のテーマで詳しくお話いただきましたので是非御覧ください!
この3つの取組の中から、今回は乳がんスクリーニングについて詳しくお話いただきました。
1990年代から女性のガン疾患の中で、最も罹患数割合が多い高い「乳がん」
早期発見のタイミングによって、生存率が大きく変わってくる疾患です。
そんな乳がんの早期発見にAI/ML技術を活用されているお話でした。
「人の生死をデータが左右する」 ぜひデータ活用が進んで欲しい領域ですね。
ではどのように、マンモグラフィーで人の命を救うのかというと、健診には需要と供給があり、よく伺う健診の告知で需要を高めすぎても医療機関や医師のリソースが足りないといった課題が生まれるとのことです。
そのため、AIが適切な健診を行うことでこのリソース不足の課題を解決するといった内容になっています。
実態として画像診断においては、健康診断などの場合、医師は一枚あたりの判断を数秒程度でしか見れないそうです。(高速で診断されている医師の方も凄い・・・!)
研究結果で医師よりもAIの判定の方が正確であるといった結果も出ていました。
コンピュータでの画像診断があたりまえになることで、より良い医療が公平に提供できるようになりますね!
人の手や判断が必要な複雑な疾患に医師の方が対応できるようになりますね。
また、AIの公平性についてもご説明いただきました。
どのデータにも言えることですが、完全に公平なAIの構築の構築は難しく、少なからずAIにも制限や網羅的に考慮することが大切なんですね(目的、対象、データの偏りなど)
AIの公平性を支えるものは、「世界的に標準化されて利用可能なデータ」と今回のテーマでもある「公平性」が大切であると学びました。
まとめになります。
なぜ、GoogleがHealthcare領域におけるAI活用の取組をされているのか、背景や具体的な取組と
AIの公平性を支えるには、デジタルデータの標準化が必要との話をいただきました。
想像以上に多くのかつ高度な医療技術の開発に取り組まれていることがわかりました。
ヘルスケア分科会の先陣を切る素晴らしい内容でしたね。
「医療」という自身の生活へ直接的に影響する領域なので、引き続きウォッチしていきたいです!
私自身も引き続きAI活用が進展するよう貢献できればと考えました!まずは所有しているFitbitの魅力を社内や身近に布教していきたいと思います!
加山さん有難う御座いました!
(株式会社primeNumber/加藤 大輝)
Google / 松田様, Google Cloud / 星野様 「Fitbit の最新事例 & fitbit部の紹介」
2つ目のテーマはGoogle Cloudの星野 慶さん&松田千枝さんの発表です。
松田さんからはFitbitを活用されている事例と、Jager内でもFitbit部ができるということで紹介をいただきました。
星野さんからはFitbitとGoogle Cloudを連携した活動について紹介いただきました。
Fitbitの特徴としては、なんといってもその普及率と16年の歴史!これだけのデータが連携されることで、新たな価値や進化を続けているそうです。
医療・アカデミック分野での活用も進んでいるそうで、日本での研究事例だけでも 2000人規模のPHR研究に使われていることで、海外だとより大規模な研究も行われているとのことです。
研究を行うにあたって、診察室外でのヘルスケアデータが簡易に収集できるということは研究を加速させる因子となりますね。
また、無償公開されているAPI項目も多岐にわたるとのことで、新機能も追加され続けているらしいです。
ストレス反応があったタイミングを通知し行動変容を促す機能、定量バイタルデータと感情データを記録する機能、振り返り機能などなど。
個人的に一番面白かったのは以下の睡眠プロファイル機能でした。睡眠スタイルから6種類の動物にカテゴライズしてくれるとのこと。自分がどの動物になるのか気になりますよね!
実際の日本でのAPI連携事例として、PREVENT社の事例、倉敷紡績社、広島大学の事例をご紹介いただきました。
PREVENT社ではFitbitのデータを活用し、個別化した生活習慣の改善支援サービスを展開。
倉敷紡績社では、熱中症のリスクを通知。広島大学では自分のヘルスデータを可視化できるようにしたPoCを展開しているとのこと。
API連携を基盤として、様々なアプリ開発ができるようになっているということ!今後国内でも更に展開が進むかもしれませんね。
実際に企業での健康経営に取り入れられている事例もあるようで、Fitbitを取り入れている企業数はなんと700とのこと!Fitbitアカデミーという団体もあるようです。
ここからは登壇者が代わり星野さんからFitbitとGoogleCloudの連携を紹介いただきました。
Fitbitの個人データを可視化や分析、予測した結果でアラートなどをするためにはデータのストック場所が必要になるため、そのクラウドでの保存先としてGoogle Cloudがバリューを出せるとのことです。
また、Fitbit×GoogleCloudの連携デモについても紹介いただきました!
GoogleCloudでは、Fitbitとの連携用のパッケージは以下のサイトで提供されているとのことです。
https://cloud.google.com/device-connect?hl=ja
また、Githubのリンクでも公開されているようです。
https://github.com/GoogleCloudPlatform/deviceconnect
アーキテクチャとしては、以下のような形らしいです。ユーザー側へのデータ提供同意や、トークンの発行などがパッケージ化されている部分はかなり大きいですね。
ちなみに星野さんはこちらが公開される前は自前でゴリゴリ自前で実装していたとのことです!(ツヨイ…!)
他にもLookerでのダッシュボード構築・可視化に関してもデモをいただき興味深かったです。
顧客とのミーティング時間や、人事評価との連携可視化なども可能とのこと。睡眠スコアと売上の関係などは可視化すると面白いですね!
ヘルスケアが注目されている昨今だからこそ、個人、企業、研究等様々な領域でのFitbitの活用の発展性を感じる興味深いLTでした。
かくいう私はFitbitを持っていなかったのですが、講演を聞いてポチってしまいました。。
ヘルスケアデバイスへの注目・開発は今後更に加速する時代だと思うので、取り残されないようにキャッチアップ&柔軟に利用していきたいですね。
(フューチャー株式会社/山本竜玄)
株式会社Kiara, 関西ヘルスケアサイエンスインフォマティクス / 龍岡 久登様 「医療業界におけるDXの壁」
ここからは、ヘルスケアに関わる方々によるLTです。1つ目は医師でもあり、Kiaraさんでエンジニアとしても活躍されている龍岡さんのお話です。
医師である龍岡さんは、医療業界が公費でまかなわれているという理由や、個人情報の取り扱いが厳しいという点などにビジネスを主体に進められないという困難さを感じているそうです。
また、一般企業でいわれているDXなどを推進して売上を上げることができず、一人の医師が診られる患者の数にも限界がある点でも困難さを感じているとのこと。
たしかにお医者さんはコンテナでもサーバレスでもないのでスケールアウトはできないですし、患者さんの症状も様々なので診療・治療にかける時間も一定ではないですよね・・・
医療機関が一般企業と異なる点はリソース投入の効果にもあるそうで、リソース投入=売上増に直結しないため、リソース投入は医療の「質」を上げるという目的になる傾向があるのだそうです。
なるほど、例えば何億円もするような高価な医療機器を導入する目的って、確かに病院の売上が目的じゃなくて、高度な医療を受けられるためって感じですね。
しかし、医療の「質」の向上は患者や国にはメリットがあるのですが、医療機関にとっては売上はあがりませんし、医療従事者に負担を強いているという状況があるようです。
一方、医療の「効率化」に関して医療機関の集約化を例にとると、患者は遠くの病院に行かなくてはならないという利便性の低下を招いてしまいますし、医療機関は雇用を抱えなくてもよくなりますが、そうすると医療従事者の数は減っていくんでしょうね。ん~・・・難しい。
そんな中、コロナ禍においては診療の効率化が社会的に解決しなければならない問題になり、医療従事者の絶対数や勤務時間数を増やすことに加え、ITを利用した診療の効率化も様々な医療機関や企業が検討したそうです。
龍岡さんがこれまで見たことのある事例では、クラウドで診療予約を受け付けて、医療機関の側ではオンプレの電子カルテなどから診察や処方に必要な情報を得て、診療をするという仕組みを考えられていたそうです。
ところが、実際は患者がWebの予約フォームを利用出来ないとか、クリニックのスタッフ側もシステムを利用出来るリテラシーがないなどという問題があり、この事例を通じて患者、医療機関(およびベンダー)の両方に医療におけるDXの問題点があると感じたそうです。
DXって最終的には「人」がデジタルを利用するので、ITを入れればなんとかなる!という訳にはいかないのですね・・・
昨今、話題に挙がるAIの導入に関しても課題はあるそうで、医療従事者が自ら患者に対応した結果とAIが対応した結果が同じくらいの精度だとしても、AIを利用した場合はエラーになった結果に対してその理由や、それによるリスクを人間側が理解しにくい状況になるというおそれや、逆にエラーだけをピックアップして警告してくれるAIであったとしても、確認項目が多くなりすぎることで確認を怠ったりするリスクもでるそうです。
医療現場だけではなく、システムを運用している中でもエラーアラートが多すぎると見なくなっちゃって、本当に注意しなければならないアラートを見落としてしまうということがありますね・・・
かつての医師が全ての治療方針を決める時代から、患者に治療方針を委ねるように変わってきたのを経て、これからの医療ではデータを中心に医療機関、患者、そしてそのデータをうまく利用出来るような企業が三位一体となって医療だけでは解決出来ない課題の解決に向かっていく必要があると感じているそうです。
そこで、龍岡さんらは、医療、Biz、ITの3つが組み合わさってコミュニティのような活動を通じて、課題解決に向かう未来を実現したいと考えているそうです。
すばらしい!BizDevOpsじゃなくて、BizDevHealth って感じですね!
今後は医療従事者が参加するハッカソンイベント(すごい!)などにも取り組んでいくとのこと。
医師としても活躍されている龍岡さんご自身の経験から語られる言葉には非常に重みがありました。テックサイドに身を置く立場としては、新しい視座が得られた発表でした。
ありがとうございました。
(株式会社エヌデーデー/関口貴生)
PharmaX株式会社 / 尾崎 皓一様「薬局DXを進める上での苦労話と行政コミュニケーションのコツ」
最後は、PharmaXの尾崎皓一さんの発表です。
尾崎さんからは、薬剤師のリモートワークを実現した経験談を通して、薬局DXを進める上で苦労した点や、行政コミュニケーションのコツについて、お話しいただきました。尾崎さんのPharmaXでは、薬局のDXを推進する事業を展開しているそうです。
初めに、尾崎さんが携わっているオンライン薬局事業「YOJO薬局」について説明いただきました。オンラインで薬剤師に相談でき、家まで薬を届けてもらえるサービスとのことで、今回は特にLINEで薬剤師に相談して漢方やサプリを届けてもらえるセルフメディケーション事業について焦点を当てています。
オンライン相談であればリモートワークでも対応できるのではないか、ということからリモートワーク環境を作ろうとしたそうです。薬剤師は薬局で働くことが当たり前となっているため、育児や介護などで働けない方が数万人もいるとのことで、リモートワークの実現には大きな社会的意義があります。
ただし、薬剤師のリモートワークには法律の壁をクリアする必要があります。一般用医薬品は実店舗にいる薬剤師(登録販売者)が説明をしないと販売できません。行政にリモートワークが実現可能か確認するところから始めたそうですが、そもそも法律で薬剤師のDXは想定されていないため、グレーな部分が多いそうです。
行政の窓口は保健所になるそうですが、担当者とのやり取りには大変苦労されたそうです。
特に法律解釈がグレーな話については、担当者が保守的になる傾向があるようで、許可取りのようなコミュニケーションは避けたほうが良いそうです。
スムーズに許可を得るためのコツとしては、法律解釈等について十分準備をしてから確認してもらう、といった流れがいいそうです。許可取りの方式だと保健所の負担が大きいので、それを軽減することで許可しやすくなるのかもしれないですね。
2つ目のコツとしては、「ダメと言われても諦めるな」だそうです。
法律が薬剤師のDXを想定しておらず、解釈次第の部分が多いため、担当者が懸念しているポイントをヒアリングし、地道に一つ一つ対応していくのがいいようです。解決すべき課題が明確になるので、成功するチャンスかもしれません。
この辺は、一般的なシステム開発の要求分析や要件定義にも通じるところがあるかもしれないですね。
これらのコミュニケーションの結果、尾崎さんたちは無事にリモートワークの体制を構築できたそうです。セルフメディケーション事業では、オンラインでは不十分になる可能性のあるオーバードーズや副作用等の問題に適切に対応するため、相談内容に対してリモート薬剤師が返信内容の下書きを作成し、実店舗薬剤師が監査するシステムを構築したそうです。
どのような業種でもコミュニケーションは重要な課題ですが、相手が懸念している点に寄り添う姿勢が大切と感じました。
ありがとうございました。
(株式会社エヌデーデー/泉啓太郎)
所感・まとめ
Google Health 領域のAIやFitbitなど、ホットなGoogle最新情報にコミュニティのSlackも大盛況でした!
医療DXに取り組まれている企業のLTでは共感のコメントが多数寄せられ、議論やディスカッションもSlack上で起きたりと同じ領域に取り組む企業間での良い情報交換ができました!
最後はコミュニティではお馴染みのJagu’e’r ポーズで閉会!
前半はGoogleのヘルスケア最新事例紹介、後半は「医療DX」をテーマにしたユーザ企業のLT、というまさにGoogle Cloud 公式ユーザ会のJagu’e’r らしいイベントとなりました。
ここまでヘルスケア分科会の記念すべき第一回 meet upの様子をお伝えしてきましたが、分科会の取り組み内容や雰囲気が少しでも伝われば幸いです!
まだまだスタートしたばかりの分科会ですが、ヘルスケアをテーマにGoogleとユーザー・パートナー企業がコラボレートしながら情報交換やディスカッションの場を作っていきたいと考えています。
こんな回をやって欲しいなどの要望は分科会参加フォーム、イベント後アンケート、コミュニティSlackなどでいつでも募集しています!
この記事を読んでご興味を持たれた方は是非 Jagu’e’rへの会員申し込み & ヘルスケア分科会へ申し込み をお願いします!
(PharmaX株式会社/尾崎皓一)
次回予告
次回の第二回はお昼の時間帯にLT2本をオンラインランチmeet up形式でライトにお届け予定です!
3/24(金) 12:10-12:50
・Fitbit 事例の紹介(PREVENT 亀山様)
・Cloud Healthcare APIの活用事例(PharmaX株式会社 竹内様)
ご参加お待ちしております!