AI/ML 分科会 Meetup #8「年納めLT大会」開催レポート

皆様こんにちは!本年もよろしくお願いします!

2024年の締めとして、AI/ML 分科会では 昨年11月25日にLT 大会を開催しましたので、その内容をレポートしていきます。

昨年前半は勉強会やハンズオンなどが中心で多くの方に登壇頂く機会がなかったため、年末こそはということで企画したのが本 LT 大会。現地参加者は 30 名、オンライン参加者は 40 名の計 70 名と、当分科会の今年最大規模のイベントとなりました。

あえてテーマを絞らずに自己紹介、テック系、やってみた系などなんでもござれで募集したところ、なんと総勢 18 名の方に登壇頂けました。当日の進行運営の努力もさることながら、きっちり発表時間を守って頂いた皆さんに賛辞拍手を送ります!本当に素晴らしい!

 

ちょっとだけ、参加前後のアンケートをご紹介。

やはり多くの方が AI/ML や生成 AI について、他の人がどんな風に使っているのか学びたい、独学の限界でお困りの方もいらっしゃるのかなと見受けられました。また、自分のことも知ってもらいたい、他の参加者と交流したという方も多くいらっしゃったのはユーザーコミュニティ運営としてのやりがいを感じます。

所属組織にいるだけでは分からないことも聞けちゃうのが Jagu’e’r の素晴らしいところ。

利用経験についても聞いてみたところ 2 / 3 以上の方は日常的に業務で利用、独学で勉強したことがある、実際に使ったことがないという方もいらっしゃいました。新たに始めようとされている方にもご参加頂けるのはとても嬉しいですね。

 

最後に、参加した感想や興味があったことなど、を自由に書いて頂きました。いくつかピックアップして紹介します。

・外部LTへの参加・登壇ともに初めてでしたが、とてもアットホームでここが初戦で良かったととても思いました!!
・良い雰囲気で発表しやすい空気だと感じました。
・初登壇でしたが雰囲気がよく、大変楽しかったです!
・社内のAIへの取り組みと他社のそれとの温度差が感じられた
・非常に興味深くて勉強になりました。出来ることや出来たことは事例としてよく聞きますが、成功や実装に至るまでにどんな苦難があったのか生の声が聴けて良かったです。
・普段関わりのない分野の話も聞けて興味深かったです。

今回、初参加・初登壇の方が多く、雰囲気の良さを述べて頂いています。参加者みなさん一人ひとりが温かくも刺激的な空気感を作ってくださったおかげです。

前置きが長くなりましたが、ここからは特に印象強かったという声が多かった発表をピックアップしてお届けします。

(岡安 優(Mario)/株式会社unerry)

 

 

生成 AI を使った実践で使えるデータ分析(松本 祥三さん)

 

松本さんの発表は LLM に興味がある人だけでなく、プロダクトの施策立案・実行者全員に夢を見させる話でした。

具体的には、大規模データから値という結果を出すだけではなく、「結果の要約」「その要約からの示唆やアクション」までを出してくれるというもの。

 

私も普段データ解析・分析を行っていますが、数値を出してからの読み込みや示唆出しにはものすごい労力と時間がかかります…。

今回の松本さんの発表では、その労力・時間がものすごくカットできて、データドリブンに爆速 PDCA サイクルを実現できるな!と感じました。

構成も「結果」「良い点/悪い点」「課題に対する打ち手」と、施策立案者が見たいであろう情報が無駄なく網羅的に盛り込まれていました。

また、よりよいものを実現させるために、「LLM の得意なところだけ担当させる」というのもすごかったです。

LLM は数値の誤りを引き起こしやすいため、計算させることは避け引用に留めているとのことです。LLM にすべて任せるではなく、得意なとこだけお願いして、不得意なところは他のアプローチにするというのは本当にクオリティが高いなと思います。

 

今回の発表では松本さんのバックグラウンドに合わせてゲームでの事例でしたが、施策検討する必要のある業界・サービスならどれでも活用・転用できるものだと感じました。

また話が本当にわかりやすく、かけだしの私でもすんなり頭に入ってくる発表でした!発表ありがとうございました!

(道菅公大郎/株式会社インテージ)

 

 

スタンプ 1 つで URL を要約!Gemini を活用した Slackbot を作りました(西田 駿史さん)

 

西田さんの発表は、身近な課題をわくわくする方法で解決する発表でした。 

課題の部分で触れられていた情報のキャッチアップの大変さは私も激しく同意し、エンジニアなら多くの方感じていると思います。個人的には仕事が忙しいとどうしても諦めてしまいがちになります。。

本発表ではこの課題に対して、「スタンプをトリガーとしたslackbotを用いて記事を要約する」という解決策が提示されました。

 

個人的に感じたポイントは大きく2つ「非常に身近な UI / ツールを使っている」「シンプルなアーキテクチャ」です。

身近なツールだからこそ、多くの人が気軽に使うことができ、社員がディスカッションするなど使われ方も広がるのだと感じました。

また、シンプルなアーキテクチャで実現することで、開発コストが下がり、無理なく実装することができるものになっております。

 

Slack という身近なツールを用いた、簡単なアーキテクチャで解決策を実現できるアイディアは個人的に非常に魅力的に写りました。

ちょっとした課題を LLM を使ってスマートに解決する姿勢はぜひ見習っていきたいです。。。!

 

本発表では、応用方法の多様さにも触れられており、スタンプというトリガーの手軽さが活きるなと感じました。

大変勉強になる発表をありがとうございました!

(山村 悠一朗/株式会社インテージ)

 

 

【人生初 LT 会】Gemini で趣味活を深めたい(道菅公大郎さん)

 

道菅さんからは、生成 AI を活用して自分の趣味(サウナ)における好みを分析するという事例が発表されました。

アプローチとしては、”サウナイキタイ”のページから各サウナの特徴量と口コミを収集し、Gemini で要約。これを道菅さんが独自にアノテーションしたサウナごとのスコアと照らし合わせることで、自身の好みの傾向を分析しました。分析の結果、重視するサウナ要素として、熱さや湿度 / 水風呂の温度 / 外気浴スペースの開放感 / 設備の快適さ / ロウリュのクオリティ / 施設の雰囲気 が抽出され、これらはサウナ体験の構成要素として(筆者のような素人でも)解釈しやすい形でまとめられていると感じました。従来の自然言語処理による文章分析と比較して、LLM を活用することで、よりカジュアルかつ解釈しやすい形での分析が可能になったことを実感しました。

(喜久里 陽/株式会社Hogetic Lab)

 

 

自己紹介と最近のVertex AI利用事例(喜久里 陽さん)

 

今回の LT 大会では、3 分間の自己紹介に特化したパートが設けられ、技術者の個性や実績に触れる貴重な時間となりました。

喜久里さんはデータ分析と機械学習の分野で活躍するデータサイエンティストで、Google Cloud Champion Innovator にも選ばれており、最先端技術を駆使したプロジェクトで成果を上げています。

 

最近取り組んだ事例として、ダッシュボード上の分析自動化と、文献検索効率化のための特定専門領域におけるキーワード抽出について紹介がありました。特に後者については、具体的なシステム構成図とともに説明がありました。そのシステムは、Google Cloud の最新サービスをフル活用したものです。

システム構成としては、まずユーザーが操作を行う UI から始まり、Cloud Run で稼働するバックエンド API を経由して、Vertex AI Pipelines でデータ処理ジョブを実行します。このジョブでは、データソースから取得したデータに対してデータの加工・整形処理が行われ、さらに T5  モデルや Gemini 1.5 Flash をファインチューニングしたモデルを用いてキーワード抽出が行われます。中間データは Cloud Storage に保存され、効率的なデータフローを実現しているのも特徴です。

利用している Google Cloud のサービスとしては、Gemini 1.5 Pro/Flash や Vertex AI Pipelines など、最新の AI/ML マネージドサービスが挙げられました。クラウド技術を最大限に活用することで、効率的かつ高度な処理が実現されています。

 

「時間内に話しきれないので、ぜひ懇親会で!」という締めの言葉からも、3分間に凝縮された喜久里さんの技術力と尽きない情熱が伝わる自己紹介でした。

(古畑 和輝/株式会社Hogetic Lab)

 

 

MLflow を Vertex AI Experiments で置き換えてみた話(林 知範さん)

 

林さんによる「MLflow を Vertex AI Experiments で置き換えてみた話」という発表では、MLflow からの移行を検討する中で、Vertex AI Experiments のライブラリを読み解いた事例について紹介されました。

開発中に感じる「気持ち悪さ」、特にライブラリの仕様に起因する違和感は、多くのエンジニアにとって共感できる経験かと思います。しかし、その違和感を解消するためにライブラリのコードを深く読み解くのは、やろうと思っても実際には中々できないものです。自分としても、この発表を拝聴して Vertex AI Experiments が Vertex ML Metadata のラッパーであることや、各関数の関連性を知れたことで、今後の実装の応用の幅が広がると感じています。

最近は生成 AI の利用事例を目にする機会が多くなっていますが、このような MLOps や ML 基盤に関するトピックも同じように有用なので、AI/ML 分科会でもぜひ取り上げられればと考えています。

(喜久里 陽/株式会社Hogetic Lab)

 

 

CloudRun × Gemini で季語アプリを作ってみた(山村 悠一朗さん)

山村さんによる「CloudRun × Gemini で俳句アプリを作ってみた」という発表では、Gemini を利用して季語の選択から俳句の生成までを支援するアプリについて紹介されました。

個人的に特に興味深く感じたのは、古語や独特な日本語表現が用いられる俳句の季語に対して意味検索を試みていた点です。我々が利用できる LLM の日本語の学習データの多くは現代語だと思われるので、日本語の理解が得意な Gemini にとっても、時代や文化的な隔たりがある表現の意図を捉えることは挑戦的なタスクだったのではないかと考えています。

このようなタスクに対して RAG を活用したソリューションを通して試行錯誤されていましたが、その開発過程では、検索精度が出るように季語のベクトル化で様々な前処理を試したり、季節ごとに検索インデックスを分けるなど、従来の検索技術も適材適所で組み合わせている点について、自分も大変勉強させていただきました。

現状では、5-7-5 にならないケースや、同じような俳句が出やすいなどの課題もあり、独自の評価指標 ”芭蕉度” で 20% ほどということです。実際の俳句データによるfew shotやfinetuningを組み合わせると芭蕉度も改善するのではないかと感じました。タスクそのものの面白さも相まって、今後の発展にとても期待したくなる内容でした。

(喜久里 陽/株式会社Hogetic Lab)

 

その他の登壇者からのコメント

 

今回、ページの関係で一部の登壇のみ取り上げさせて頂きましたが、登壇者の皆さまかから一言ずつコメントを頂きましたので記載致します。

みなさんのおかげで、した!

CTCS 古林信吾

「周りがすごい人たちばっかりでしたが、楽しく登壇させてもらいました。次はもう少し発表時間の長いネタで登壇したいです」

HogeticLab 松本

「仕事の都合でオンライン参加でしたが、興味深い発表が多く、現地入りできなかったことが残念です。次回があればぜひ現地で皆さんとお話しさせていただきたいです!」

kotamat(ROXX CTO)

「皆様の多種多様な登壇を聞けたのはもちろん楽しかったのですが、150 分の登壇、オンラインオフライン、長短様々な登壇がある中で、時間内に終わらせる運営の皆様の運営力と細かな気配りが素晴らしいイベントでした。」

NTTCOM 林(ぴーはや)

「AI/ML 分科会は普段自身の遠くにあった分科会でしたが、踏み込んで今回発表できて楽しかったです。刺さる人には刺さる発表ができたなかなと思います。開催ありがとうございました!」

s-nishida (iret 西田 駿史)

「こんなに一度に沢山の LT を見たのは初めてで、情報の咀嚼に忙しくも大変興味深かったです。私自身も楽しく登壇させていただき良い経験になりました!」

nic_kitawaki

「初参加ということもあり緊張しました。周りの方々がすごい発表をしていてとても刺激を受けました。ありがとうございました!」

IRET 田村

「気になっていたトピックで登壇ができ終始楽しく参加させていただきました。また様々な観点から皆様の LT を見ることができて勉強になりました。イベントの開催をありがとうございました!」

DOKAN KOTARO

「私自身はじめての社外 LT でしたが暖かい雰囲気でなんとか話せてよかった。自分に比べ周りの方々がレベルの高い発表をしていてもっと頑張ろう!と思えました。イベントの開催ありがとうございました!」

Risa(G-gen)

「AIML 分科会が初登壇、周りはすごい方ばかりで緊張しましたが、皆さんの発表を通じて学べたこと、今後に活かしていきたいことが非常に多く充実した時間となりました!引き続きどうぞ宜しくお願いいたします!」

akira.kikusato

「Jagu’e’r 初登壇でしたが、みなさん時間を厳守しながら和やかに発表されていて、自分も楽しく発表できました。LT のトピックも幅広く、全体通して興味深く拝聴させていただきました。次回以降も微力ながら発表やサポートなどやっていければと思います。」

yusuke hayashi

「Jagu’e’r 初登壇でしたが、暖かい雰囲気で楽しく発表できました!周りの皆さんの発表内容も多岐に渡っていてとても興味深かったです。イベントを開催していただき本当にありがとうございました。」

山村悠一朗

「Jagu’e’r 初登壇でしたが、和気あいあいとした雰囲気で楽しく発表できました。皆さんのレベルが高く、非常に刺激になりました!参加できてよかったです!イベントを開催していただきありがとうございました!」

Yuya Watanabe / VMware

「初現地の参加で初登壇させてもらいました。皆さんの反応やお話をリアルに感じられやはり現地は違うなと感じました。また参加させていただきます。」

Kazuki Furuhata

「Jagu’e’r 初登壇でしたが、終始リラックスした雰囲気で楽しく発表できました!多彩なテーマが揃い、大変刺激的な時間でした。素晴らしいイベントを開催していただき、ありがとうございました!」

Kento Kimura

「AI/ML 初登壇でしたが、とても勉強になる & 楽しい分科会でした!初心者ですが、今後も分科会を通してたくさん勉強させていただきたいです!」

 

あとがき

さて、この LT 大会は 2024 年 11 月 25 日に開催されたものであり、一年の集大成を意図して企画したものでした。実際に、LT の内容も多様であり、Google Cloud を用いた AI/ML に関する取り組みの多様さ、活発さを反映したイベントだったと思います。

一方で、この翌月の 12 月には Gemini 2.0 の発表により、AIはチャットのように文章を生成するという世界観から、テキストに加えて画像も利用するマルチモーダルへと世界が一変しました。また、 NotebookLM Plus はこれまで個々の組織で構築してきた RAG システムをサービスとして提供するものであり、生成 AI を業務利用するためのハードルを大きく下げるでしょう。

AI/ML の分野の変化の速さ・激しさはこれまでにも言われてきたことですが、より一層加速したように思います。2025 年、どのようなイノベーションが登場するか、期待に胸を膨らませると同時に、どのような活用ができるのか、この分科会で考えていけたらと思います。

 

(Mario(岡安 優)/ 株式会社unerry、杉山 阿聖 / Citadel AI)