各社の情報発信ノウハウがたくさん!Jagu’e’r Tech Writers 分科会 Meet Up #1 を開催しました!

Jagu’e’r Tech Writers とは?

Jagu’e’r Tech Writers (以降 Tech Writers) は、Jagu’e’r (Google Cloud のエンタープライズユーザー会) の情報発信を盛り上げる!をテーマに発足した分科会です。2023年8月に立ち上げました。

Tech Writers とは

Tech Writers では、情報発信を盛り上げるための様々なアクティビティを実施予定です。分科会に参加することで、スキル、ナレッジ、ノウハウ、コツなどを楽しみながら高めあえる場を目指しています。

イベント第1回目となる Jagu’e’r Tech Writers Meet Up #1 を2023年9月29日(金)にオンラインで開催しました。初回は「各社の情報発信活動」をテーマに、Google Cloud に関するテックブログをはじめとした情報発信を積極的に行っている Google Cloud パートナーさん、そして Google Cloud Japan のエンジニアチームから LT 会を行いました。本ブログでは各セッションをレポートします。

LT#1 クラウドエース技術ブログの変遷

LT1発目はクラウドエース 阿部 正平 さんから、クラウドエースさんがこれまで行われてきた技術ブログの活動の変遷をお話しいただきました。

黎明期

  • 2014年から「apps-gcp」という技術ブログを運営、Google  専業ベンダー No.1 をアピール
  • ゲーミフィケーションによるモチベーション向上施策などを実施
  • 更新頻度や PV 向上に繋がらず、2020年ころにはほぼ更新されなくなってしまった

クラウドエースさんの技術ブログの変遷

運用上の問題点

  • レビューフローが不透明 → レビューフローを周知、管理表で運用、Slack 通知
  • レビュアーが CEO のみでワンオペ → レビュアーを増員したが改善できず。
  • メンバーが多忙で書けない → モチベーションを上げる企画を実施
  • ツール上の問題 (WordPress を Google Doc に変換してレビュー)、手間がかかる

クラウドエースコラムの立ち上げ

  • 既存の技術ブログはマーケティング・ビジネスの目的もあった
  • ビジネス主眼の技術記事はコーポレートサイトのコラムに掲載
  • クラウドエースコラムはマーケティングチーム主体のため、エンジニア多忙問題は解決

新技術ブログの立ち上げ

  • 2022年8月に再スタート (https://zenn.dev/cloud_ace)
  • 運営・運用コストが安く、GitHub + MarkDown で執筆でき、エンジニアファーストである Zenn を採用

新技術ブログの運用

  • 新技術ブログの目的
    • エンジニアの自己学習機会の場として活用
    • アウトプット能力の向上
    • 知識の共有
    • コミュニケーションの活性化
  • 執筆者のモチベーションを下げない工夫
    • GitHub の Pull Request で記事を作成、レビュー依頼
    • GitHub のレビュアー自動アサイン機能を使ってラウンドロビン
      • TUM (マネージャー) がレビュー
    • 2023年9月以降は月平均10件以上を維持しており、リブートとしては順調

新技術ブログのレビューは Pull Request 運用

初期運用体制の問題点、改善案

  • レビュアー自動アサインの問題点
    • 問題点
      • 専門外の技術領域のレビュー依頼が来た場合の負担が大きい (機能の確認などの調査に時間がかかる)
      • 執筆者とレビュアー (TUM) の関係性が薄いと連携が薄くなる・互いに多忙かどうかがわからない
    • 改善案
      • 同じユニットの TUM にレビューを依頼する方式に変更
  • 自分の記事の PV が分からない
    • 問題点
      • Google Analytics を使っていたが、アンダーマイニング効果につながる可能性を危惧して公開していなかった
      • 自分の記事が注目されていても、どれほど注目されているか把握できなかった
    • 改善案
      • Looker でダッシュボードを公開
      • モチベーションについては TUM がフォロー

現在の運用・今後の運用

  • 現在
    • GitHub を使った記事執筆は維持
    • 社内の Tech Blog Challenge 施策でモチベーション向上
    • 月毎による CTO による「今月のイチオシブログ」紹介
    • 2023年5月以降は、それまでの2倍以上の執筆件数に!
  • 今後
    • レビューの一部自動化
    • 新卒・若手に積極的にアウトプットしてもらえるような施策

執筆頻度も順調に増加

企業のブログ運営として、「問題・課題を放置しない」姿勢が大切

  • クラウドエースでは技術ブログの執筆を必達業務としていない
  • エンジニア個人のモチベーションを低下させない工夫が大事
  • 企業文化としてエンジニアの自律的なアウトプットを支援する方向で運営したい

感想

「業務命令としての記事執筆は続かない」というのは (個人的には) 技術ブログ執筆あるあるだと思うので、エンジニアが積極的にアウトプットしていくための施策やうまい働きかけが重要だと思います。

できるような環境にしていく目的の上で、Zenn を採用されているのは Zenn のコンセプトともマッチしていて良いなと思います。

Tech Writers でもモチベーションを高めて積極的に技術ブログを発信するためのアクティビティを今後ご一緒できると嬉しいです!

LT#2 G-gen Tech Blog の流儀

G-gen の CTO、杉村 勇馬さんから G-gen さんの社内で技術ブログを書く上での流儀についてお話しいただきました。杉村さんは X (旧 Twitter, @y_sugi_it) でもほぼ毎日 Google Cloud や AWS のアップデート情報を最速でポストされているので、お目にしたことがある方は多いのではないでしょうか。キャッチアップスピードがとにかく速く、頻度も多くて素晴らしすぎる!

自社ブログのメリット

  • 個人へのメリット
    • 知識の整理
    • 知識のストック
    • 構造化された文書を書く練習 (設計ドキュメントの練習)
  • 会社へのメリット
    • 営業資料 (Google Cloud の紹介時に活用)
    • 顧客への説明資料 (エンジニアが説明の際に活用)
    • マーケティング効果 (知名度向上、問い合わせ増加)
    • 採用マーケティング効果 (ブログを見て転職してくれる人)
    • 社内エンジニアのためのテキスト (Google Cloud の学習に)
    • 社内の勉強会のネタ (社内勉強会で流用できる)
  • 定量化が難しい
    • 定性的な成果 (実感) はあるが、定量化 (¥への変換) が難しい
    • マネジメント層 (場合によっては経営層) の決断が必要

技術ブログは¥に変わるプロセスでとても大事

G-gen のエンジニアがブログを書く理由

  • ノルマなし、強制的な目標設定なし、ボーナス (特別な報酬) なし
  • 説1 : CTO がたくさん書いているので無言の圧がかかっている
    • 総記事数 261 に対して CTO の執筆数が 90 (34.4%)
  • 説2 : G-gen の行動指針の1つに「アウトプット」がある
  • 説3 : インターネットの情報というものに恩を感じている

G-gen さんの行動指針

G-gen の「ブログ執筆ガイドライン」

  • 門外不出、全23ページのガイドラインを一部ピックアップ
  • ビジョン
    • 日本語で Google Cloud 情報を発信することで、日本のクラウド普及を後押しする
  • ブログ執筆の効果
    • マーケティング効果
    • 採用マーケティング効果
    • 内製化促進効果
    • ナレッジ蓄積効果
  • ブログの想定読者
    • マーケティング
      • 顧客・潜在顧客の意思決定者・担当者
      • Google Cloud 従業員
    • 採用マーケティング
      • IT 技術者
      • IT 営業
    • 内製化促進
      • 顧客の担当者
    • ナレッジ蓄積
      • 提案のためのナレッジ
      • 設計のためのナレッジ
      • 構築のためのナレッジ
  • ブログの品質基準
    • 顧客に渡せるクオリティ
    • ターゲットを明確に
    • Google 検索エンジンに高品質認定してもらうことを意識

門外不出

感想

G-gen さんは2021年に設立された Google Cloud 専業のシステムインテグレーターですが、いまの時代に特化したカルチャーが根付いているのだなと感じました。CTO の圧として…ではなく、杉村さんに憧れていてアウトプットのモチベーションになっている方もきっと多いんだろうなと思います。

そして衝撃の事実、現在レビュアーは主に杉村さんのみで対応されているそうです。どうしてそんなに情報発信をしてお忙しそうなのに、レビューもこなせるの?という問いに対しては「回数をこなせば指摘するポイントが決まってくるので効率化される」とのことでした。なるほど、ブログを多数執筆する場合と同じように、レビューも筋トレ (数をこなすと速くなる) ですね。

目が滑らない文章を書くという点は参加者の方からも共感を多く得ていて、下図の左側は Google Cloud の公式ドキュメントのイメージです。確かに…!改善されるよう努力します。

LT#3 DevelopersIO とクラスメソッドの文化

ザ・ブログの会社であるクラスメソッド半澤 祐也さんと山本 紘暉さんから、DevelopersIO と Zenn を中心とした社内のブログの書き方についてお話しいただきました。

お二人の資料は既に DevelopersIO に掲載いただいてます。ちなみにイベント直後に公開いただきました。さすがです!

https://dev.classmethod.jp/articles/jaguer-tech-writers-meetup-1/

https://dev.classmethod.jp/articles/presentation-jaguer-tech-writers-meetup-1/

DevelopersIO とは

  • クラスメソッドが運営する「やってみた」系技術メディア
  • 1日に20本以上のブログが投稿されている
  • 実際に触ったものや調査した情報、経験をアウトプットする場
  • 「書きたい!」と思ったものはなんでも書いてOK!
  • 社内のレビュー等はなし

なぜこんなにも活気があるのか – クラスメソッドの文化だから

Classmethod Leadership Principle (CLP)

アウトプットで循環する学習エンジン

  • インプット
    • 公式ドキュメントを読む
    • 勉強会に参加する
    • 資格勉強をする
  • 実践
    • 手を動かす
    • やってみる
    • 検証する
  • アウトプット
    • ブログを書く
    • 資格取得する
    • 登壇する
    • 案件対応の成果
  • 外的モチベーション
    • 報酬、評価、奨励、感謝
  • 内的モチベーション
    • 興味、技術が好き、楽しい(沼)、探究心
  • 相乗効果
    • アウトプットが他者のインプットになったり、触発されてブログを執筆するモチベーションになったりする
    • DevelopersIO の一番の読者はクラスメソッド社員

互いに影響を与え合う学習エンジン

ブログのメリット (個人)

  • 社内外に自分を知ってもらえる
  • 文章で書く・まとめ直すことでスキルアップする
  • みんなと場を作る (見てもらうことでグループ・仲間感が生まれる)
  • 振り返り・紹介資料として使える
  • 見られてる感、継続的にやることで適度な緊張感を作る
  • 世の中の反応が分かり、意識が変わる
  • 会社が評価してくれる
  • SNSシェア数やPV数が成果になる

ブログのメリット (会社)

  • 社外へのアピール
  • 社内の知見アップ、技術力の向上
  • 社外営業資料として使える (作業時間の短縮)
  • エンジニアへのアピール、採用に繋げる
  • コミュニティに貢献し、市場を拡大、知名度を上げる
  • ブログの内容以上を期待してくれる (他社への牽制)

ブログのデメリット

  • 執筆に時間がかかる
  • 少数では効果が出にくい
  • 公開してしまうので独占できない
    • 非公開による独占という戦略もある (あり)
  • 適している分野と適していない分野がある (e.g. 「社内独自製品の性能改善技術」は効果が低そう)

どうスタートするか

  • 適している・適していないを検討する
  • メリット・デメリットを分析する
  • ルールを決める (やらないことを決めて、あとは自由にする)
  • みんなで共有する
  • まず書いてみる (完璧を求めない)

どうすれば活性化できるか

  • 上の人が大事さを説明する (社長メッセージ)
  • 業務として定義し、評価に加える
  • 会社カルチャーと合わせる
  • 人材を採用する (自走・学習エンジン)
  • 執筆プロセスを一回経験する
    • 入社後にジョインブログを書く

どうすると活性化しないか

  • メリットがない…
  • 誰にも見られていない…
  • 他の人がやっていない…
  • 時間がない…
  • 内容でやたら攻撃される…
  • 評価されない…
  • 色々な感じ方の人が居るという現実を見て、様々な観点でメリットを用意する&改善する

そのほかに大事なこと

  • 無理強いをしない
  • 書いていない人を攻撃しない
  • ノルマにしない (自分で立てる目標は OK)
  • 単体での費用対効果を求めない (盛り上がれば自然と効果がついてくる)
  • 気楽に取り組む (内容は真剣に)

感想

(私ごとですが前職がクラスメソッドさんだったため、個人的な思い入れがどうしても強くなってしまいますが) ブログ開設当初から変わらない方針を10年以上経ったいまも続けていて、かつ新しくジョインされた方にも文化が受け継がれている (それどころか、進化している!) ということが素晴らしいなと感じました。

参加者からは「ジョインブログ、良いな」というコメントが多かったです。クラスメソッドさんでは入社時にブログの執筆者アカウントが付与され、初日にジョインブログを書くことができるようになっています。「アウトプットをまずやってみる」ということが誰にでも気軽に始められる良い取り組みだと思います。

クラスメソッドグループにジョインしましたの記事一覧

個人的に気になった、DevelopersIO と Zenn のどちらを使うか決まっているのかどうかを聞いてみたところ、基本的には執筆者の書きたいほう (Zenn の場合はスクラップを書きたい場合などもある) とのことでした。確かにスクラップは技術ブログとは異なる種類の情報発信になるので、執筆者 (エンジニア) が書きたい (書き記したい) 内容によっては選択基準の1つになりそうですね。

LT#4 Google Cloud でのテックブログ

最後の LT は Google Cloud Japan のカスタマーエンジニア・パートナーエンジニア (以下、CE/PE) チームから、パートナーエンジニアの大沼 翔さんに CE/PE のテックブログの活動を中心に発表いただきました。なお技術情報としては Google Cloud Japan 公式ブログもありますが、こちらに関してはこのセッションでは取り扱いません (またの機会に!) 。

技術ブログへの取り組み

  • エンジニアが紹介したい機能や、培ってきたノウハウ、そして知っておくと便利な Tips などを、技術ブログとして執筆し、アウトプット
  • 2018年から Medium で投稿開始
    • GCPUG の参加メンバーも投稿ができる
  • 2022年からは Zenn を加え、現在は Zenn を中心にテックブログを投稿

Zenn の Publication の初期ユーザー

Google Cloud 技術ブログ 3 の事実

  • レビューする / してもらえる!
    • 必ず 1 名以上のレビューを必須としている
    • レビューを受けたい場合はレビュー用の Google Chat スペースに依頼
    • 下書きは以下のいずれかの方法
      • Zenn の Preview (限定公開) 機能
      • GitHub の Pull Request
      • Google Docs + コメント
    • レビューには下記の効果を期待
      • 記事の品質担保 (NG な記載がないか)
      • 個人の社内プレゼンスが上がる
      • 技術に関する理解を深められる
      • コミュニケーションの活性化
  • みんなの財産になっている!
    • 問い合わせに対して調査を行った過程で得たナレッジをテックブログとして公開
    • 執筆者の理解が深まる、理解が整理される
    • 類似の問い合わせのソースとなる
    • 検索で引っかかった際の疑問解消につながる
    • 最近では生成 AI のような新技術のハウツー記事の投稿も行っている
  • 実は、いろんな人が書いている!
    • Google Cloud Japan の CE/PE だけではない
    • TSE / TAM / サポートエンジニア / DevRel / Manager も書いている
    • サポートエンジニアの方が投稿される記事には、頻繁にサポートケースに上がってくる質問に対する回答にもなっている

レビュアーがレビューしやすい方法を意識

技術ブログを書くと、いいことがいっぱい

  • 自分の実績になる
  • 知識が定着する
  • 知識のアウトプットになる
  • みんなに見てもらえる
  • みんなの財産になる
  • コミュニケーションの円滑化に繋がる
  • 話のタネになる
  • ほかにもいいことがいっぱいある

感想

Google Cloud は正直まだまだ日本語での技術情報が不足しています。その上で Google Cloud Japan の CE/PE が中心となって技術情報を発信していくことは、Google Cloud をこれから使おうとしている方の支えになったり、現在使われている方の課題を解決したり、少しの情報でも多くの効果があると思っています。

これから Tech Writers での取り組みを通して、Google Cloud Japan から技術情報をより多く発信するための文化醸成の一助にできればと思っています!

まとめ

Meet Up 第1回目企画時はまず馴れ合おうと思い、カジュアルに開催できればと思っていましたが、非常に素晴らしいセッションばかりで、参加いただいた皆さんの意識の高さを感じまくる会となりました…!分科会自体が出来立てほやほやで不明瞭な部分も多いですが、参加いただきありがとうございました。

アンケートフォームにも期待値の高さを感じるコメントもたくさんいただきましたので、参考にさせていただきながら全力で運営していきます。

Next Action – もくもく会!

Tech Writers の新たな取り組みとして、技術情報を執筆するもくもく会を開催します!

2時間の枠を使って、ブログや社内発信、X (旧 Twitter) への投稿、登壇資料の準備などをオンラインで集まってもくもくとやります。自由に入退室可能です!

  • 日時 : 10/10 (火) 16:00 – 18:00
  • 場所 : オンライン (Google Meet) ※ URL は参加者に連絡
  • 定員 : なし
  • 参加方法 : Jagu’e’r に参加したのち、Tech Writers の Slack Channel に参加

Jagu’e’r への参加は Jagu’e’r トップページから行えます。 ぜひお誘い合わせの上ご参加ください!