活動報告: データ利活用 X 人材育成コラボイベント 2022/10

みなさまこんにちは!気がついたら今年も残り1ヶ月半となりました。

そろそろ、今年は Jagu’e’r ではたくさんの分科会が立ち上がったり、会員数が総勢1700名を超えたりとすごい勢いでしたね。

そんなすごい勢いの Jagu’e’r の中でも、デジタル・クラウド人材育成分科会と、データ利活用分科会は、それぞれ Slack Channel に属する会員数が200名程と最大規模を誇ります。コラボイベントは実は Jagu’e’r の中でも初の試み。

両方の分科会に属する運営メンバーは、それぞれの分科会の良さを理解しています。だからこそ、お互いの分科会の魅力や良さを多くの方に知ってもらう機会を作りたい! そんな掛け算の試みが分科会コラボイベントです!

そんな新しいチャレンジでしたが、素敵な登壇者のみなさまや、参加者のみなさまのおかげで素晴らしい会になりました。ありがとうございました!

それではイベントの模様をお届けいたします!

目次

基調講演紹介 Google 佐藤さん /「Google 人材領域におけるデータ利活用と人材育成」

LT 紹介

パネルディスカッション

総括

所感・まとめ

基調講演紹介

基調講演はGoogle佐藤さんより、Googleの人事制度の中でのデータ利活用についてお話しいただきました。

前半は、「データ利活用✖️より良い組織」というテーマで組織改善へのデータ利活用の取り組みをご紹介いただきました。

「Googlegeist」は10年以上行われている90問の1時間かかる年次全社アンケートのことです。1時間のアンケート、回答するのも辛そうだなぁと正直思いましたが、任意にもかかわらず9割以上の社員が回答されているとのことです。

このアンケートにより収集されたデータが、いかに組織文化の改善に役立てられ続けたかが想像されます。結果は公開され行動によって示されるため、時間をかけてもアンケートに回答したいと思われる制度なんだなと思いました。結果(データ)が公開されなかったり、行動(利活用)が不十分であれば、なかなか浸透しないと思います。自分自身がアンケートを取る際にも、公開と行動は改めて意識をせねばと思いました。

ついで、今年から開始された個人の評価制度「GRAD」について紹介いただきました。個人の評価に時間がかかり過ぎることと、透明性に改善の余地があるというデータを元に、従来の個人評価の手法を見直されたとのことです。

この先、半年間の各個人に対する期待値を、予め当人とマネージャでコミットし、その結果に基づいて評価する仕組みです。過去の実績だけでなく未来も含めて会話しておくことで効率的で透明性が上がったとのことです。

Google では、社員に対し、たくさんの Survey が取られているそうです。その中でも、佐藤さんが最近答えた Survey について紹介いただきました。

「Pulse Survey」は、ハイブリッドワークに対して半年ごとに聞かれるアンケートになります。「Self-ID」は、自身のダイバーシティに関する任意のサーベイです。

「データ利活用✖️より良い組織」を通して、Googleでは社員から直接、生の声を収集し、収集したデータを透明性を重視して組織のアップデートに利活用されていることが伺えました。

後半は、「データ利活用✖️より良い人材」という視点で、各個人の人材育成の取り組みについても3点ご紹介いただきました。

「Grow」は社内での教育コンテンツやトレーナーが検索できるプラットフォームです。7万件以上のコンテンツが登録されているそうです。すごい! そのうち、本日のテーマである「データ」に関するものが圧倒的に多く1万件弱にものぼるそうです。トレーナーについても2万名弱のうち、2千名以上が「データ」に関するコーチングを提供しているそうです。

Googleにおいて、いかにデータが重要視されているかが伺い知れます。

「g2g」は、GooglerがGooglerにスキルトランスファーを行う、いわゆる社内研修です。12,000人のGooglerが講師として登録しているそうです。社内研修のうち、じつに80%以上がGooglerからGooglerに行われています。交流の促進や才能の発掘、自立・能動の促進、多様性の強化など、さまざまな効果が得られているとのことです。
自分自身も社内研修の経験はありますが、すでに何かしらの交流のある相手に行ったり、管理職者として場をセッティングして渡すことが多かったです。メンバー間同士で行われるこの仕組みは導入を検討したいと思いました。

事実、g2gでは、スキルトランスファーだけでなく、横のつながりも重視しているそうです。そのため、仕事に関係ないようなダンスや皮のなめし方とかもあるらしいです。このような柔軟性が、多様性のある組織を形成されているのかと思いました。

講習を単発で受けるだけでなく、もう少し深掘りしたいときのため、「20%ルール」が活用されているそうです。「20%ルール」は社員が就業時間の20%を本業以外に割ける制度です。興味があることや情熱を注ぎたいこと、キャリアを広げたい領域にチャレンジすることができます。Gmail、Googleマップなどをはじめとした様々なサービスも、この20%ルールから生まれました。

自分から新しい20%ルールを立ち上げる場合もあれば、「Grow」にて20%で他の社員が行って欲しい業務をプロジェクトベースで募集しているので、その中から自分自身の貢献できる分野にアウトプットすることもできます。APACだけでデータに関する要望は97件もあり需要が高いとのことです。

これまで、20%ルールの存在は知っていましたが、個人が何をするかも全て考えるのかと思っていました。需要に関するデータを利活用することで、より効果的に時間を使い、より喜ばれるアウトプットを出せそうだと思いました。

写真右の棒形キーボード、ちょっと欲しい。

これらの取り組みの中で、講師を行う社員などに感謝を伝える「gThanks」という制度も用意されているそうです。Kudosは拍手を送るようなもので、本人のマネージャからも見ることができます。Spot BonusやPeer Bonusは現金ボーナスだそうです。

感謝も可視化、定量化されることで、評価の透明性と公正性にも繋がると思いました。

最後に、これらの取り組みを、スピーカーの佐藤さんが所属する人事部において活用されている具体的な事例を紹介いただきました。

人事業務では、データの利活用が求められる機会は多かったものの、当時、データ分析に強い人数が少なく、十分に依頼を捌けなかったそうです。そこで、本日ご紹介いただいた制度を活用し、データ人材を育成をされました。

人事部の中から20%ルールを活用し、データ人材育成プロジェクトへの参加者を集われ、g2gの仕組みでデータ分析チームから採用関連チームにスキルトランスファーされたそうです。

関わったメンバーにはPeer BonusやKudosにより可視化された感謝の気持ちが送られたとのことです。

基調講演では、このような具体性に満ちたエピソードを惜しげもなく公開いただき、非常に楽しく、かつ勉強になる時間を過ごさせていただきました。社外からKudosを送れるなら送りたい気持ちです。

Googleの人事制度は様々な書籍などで概要は知っているものもありましたが、それらがデータを利活用されたものであることを知ることができました。人材育成の文化の育成は、一朝一夕には達成できないとは思いますが、講演でいただいた内容を元に、自分の組織でも参考にさせていただきたいと思いました。

(アイレット / 廣山豊)

 

LT 紹介

フューチャー / 松川様「浸み込むメカニズム」

LTひとつ目はフューチャー松川さんによる「浸み込むメカニズム」です。

「浸み込む」というのがどういうことか気になります。

誰しも「振り返ってみると遠回りしていた、知っていたらもっと効率的にできたはず」という経験はあるかと思います。

そして仮に、最初に何かを始めるときに何かしらノウハウやナレッジを持っていれば、より効率的にかつ品質も高くやれるのでは?ということで、松川さんはそれを自社の人財育成のなかで「浸み込むメカニズム」という形で取り組んでいらっしゃるのだそうです。

浸み込むメカニズムのポイントは2つあり1つが「ブレンド」です。

従来、プロジェクト業務で手一杯の状態で何かを学ぼうとすると、業務外でやっていくしかなく、そうすると学びが業務のプラスアルファになってしまい、その結果優先順位が下がってしまいます。

そうではなく、業務の中に学習をとりいれるということが「ブレンド」だそうです。

確かに業務の中に浸み込んでいますね。

そして、単純に業務内に学習をブレンドするだけではなく、次のポイントである「4要素」を意識して学習してもらえるように計画したそうです。

4要素は次の通りで、「これらが欠けているとせっかく学んだとしても身にならずに終わるのではないか」と松川さんは言います。

  1. 学ぶ必要性
  2. 学ぶ必然性
  3. 学びの活用
  4. 成長を実感

4要素について松川さんの身近な経験からたとえていただきました。

  • 寒いから衣替えしなきゃという「動機付け(必要性)」
  • 好きな芸能人が紹介していたバルトロダウンを自分も欲しい!という「必然性」
  • 買ってすぐ使えて(「活用」)自分も満足
  • そしてSNSでも好感度があがって「成長を実感」

こうして、7万円(!?)のバルトロダウンを買ってよかった!となるのが浸み込むってじゃないかと。

なるほど、先ほどの業務に学習が「浸み込んで」いくことと、学習の効果を自分の中でじわっと実感できる「浸み込む」ということなんですね。

そして、次に自社でこの浸み込むメカニズムにチャレンジした事例を紹介していただきました。

その取り組みとは、新しいテクノロジーを採用するプロジェクトへのテクノロジー教育の実践です。

実際の取り組みとしては、プロジェクトの開発準備と開発の間に学びの期間を設け、学びの前に「必要性」「必然性」を、学びの後に「活用」と「実感」を取り入れるやり方です。

「学びの必要性」では、これから始まるプロジェクトで採用する新しいテクノロジーに対するアンケートをメンバーに実施し、その結果を知ってもらうことで学びの必要性を感じ取ってもらったそうです。

確かにこうやって可視化されると、自分たちの現在地点を確認でき、学習しなければならないということが明確になります。

次に「学ぶ必然性」では、学習する上で目線を上げるために、今回学ぶスキルを獲得することのメリットを顧客視点・個人視点で訴求したそうです。

訴求する上でのポイントは「How」ではなく「Why」を中心に訴求し、かつその分野におけるエバンジェリストから伝えてもらうことで信憑性を高くして目線を上げてもらったとのこと。

単に自分たちのために学びが必要だというだけではなく、顧客にとっても役に立つというのだということは重要ですね。

その後、個々の学習を経て、松川さん達が伝えたかったことがどれくらいメンバーに響いているのかもアンケートを採って確認したとのこと。

フェーズフェーズでアンケートを実施するのも、プロジェクトの中では忙殺されがちでおろそかになりそうですが、松川さん達のチャレンジが進んでいる、あるいは場合によっては軌道修正の必要性なども確認できるので大切なステップだなと感じました。

学びを経て実際プロジェクトが開始されると「活用」のフェーズになるのですが、学んだことを快適に使いたい、使ってもらうために、メンバーをフォローできる体制を敷いたそうです。開発者にとっては安心の体制ですね。

さらにそのフォロー体制の中で出たQAをデータ化するということを行ったそうですが、このデータ化においては、質問の中身や背景がわかるような書き方にしてもらうようにしているそうです。

そうすると「他の人がどういう質問をしているのか?」ということを知ることができ、「自分の現在地」を知ることに活用できるようになると。

なるほど、こうすることで自らの学習意欲の向上であったり、他のメンバーとの相互扶助にも役立ちそうですね。

そして最後に「成長の実感」です。

成長の実感といっても、自分視点で見た場合では自分がどれだけ成長したのかが見えにくいので、第三者的な視点、すなわち客観的なデータからどれだけ効果があったのかをメンバーに教えてあげることで、個々人の成長実感につながったのではないかと感じているそうです。

今回のケースでは、過去のプロジェクトで同様に新しいテクノロジーを用いたケースにおける見積と実績のブレを比較して、コスト増加を80%抑制することができたということをメンバーに教えることができたとのこと。

確かにこれを見ると、メンバーとしては自分たちの学習がプロジェクトに貢献できているというのが実感できますね。

プロジェクトでの振り返りにおいて、定量的な測定の結果をメンバーが共有することは、次のプロジェクトへのモチベーションアップにもつながりそうです。

このようにフューチャーさんではプロジェクトの中で学びの4要素をプロジェクトの現場にブレンドして、学びを促進し、人材活用、人材育成に取り組んでいらっしゃるそうです。

日々の業務の中で学習の優先度が下がりがちなので、業務に取り入れてしまえという観点は新たな気づきになりました。

また、効果的な学びに繋げるために4要素を定義したり、その要所要所でデータを活用していらっしゃるという点が素晴らしいと感じました。

(エヌデーデー / 関口貴生)

澪標アナリティクス / 藤原様「データ利活用人材の教育・評価の課題を丸っと解決する第一歩のお話」

データ利活用分科会ではおなじみ、澪標アナリティクス 藤原さんより、データ利活用人材の教育・評価での課題と、その解決についてお話をいただきました。

澪標アナリティクスさんといえば、プロ中のプロのデータアナリストを100名程抱えるデータ分析のプロ集団!!

今回は、そんなプロ集団ならではの課題と、その解決策についての取り組み共有になります。

当初、澪標アナリティクスさんでは360°評価をはじめとして成果評価を実施。ただ、アナリスト視点だと、技術力が評価されないとモチベーションが上がらない。なので、技術力、頑張りを評価できるような体制を作りたいというところがスタートだったようです。

また、育成においても、研修や OJT の終了後、学ぶべきことが多すぎて、道筋がはっきりせず、迷いがちという問題もあったようです。

そこで今回は、社内で実施した、3つの「やったこと」を紹介していただきました。

  1. スキル項目と評価基準を定義
  2. スキル判定のテスト
  3. スキルを可視化

まずは、最初のステップとして、スキル項目と評価基準をまずはシートに定義して行ったようです。定義に当たっては、大カテゴリから小カテゴリに落としていったようです。

ちなみに、澪標アナリティクスさんでは大カテゴリとして、

  • ビジネス力
  • 分析レポーティング力
  • データサイエンス力
  • エンジニアリング力

の4つを定義。

また、小カテゴリは初期では、49個のスキルに絞り評価基準のガイドラインを作ったようです。これを作ることによって、共通のものさしを作ることができ、評価標準化を進められたようです。

次に、スキル判定のためのテストを作成。こちらでは、実践形式のテスト演習課題を作成。知識としてだけでなく、しっかりと実践に活かせるかどうかがベースのテスト演習のようです。また、単に実装すれば OK ということでもなく、シチュエーションに沿った形で、しっかり手法のメリットデメリットを理解しているかどうかというのを測定できるようなテストを作ったのだとか。

確かに、「知ってる」だけでなく、「使える」というのは重要ですよね。

そして、カッコいいダッシュボード。データポータルを使って各アナリストのスキルを可視化したようです。シニア、ジュニアごとの平均値も一緒に表示して比較できるようになっているそうです。

利用方法として、1:1 、キャリア支援でもこのチャートをベースに、次のステップに上がるためには何を伸ばす必要があるのかを話されているようです。

平均値があると、今自分がどこのレベルにいるのかがはっきりして、すごく良いですよね!また、それぞれの評価軸のラベルをよくよくみてみると、各スキルでの細分化が非常に良い粒度感で、かつ実務の視点で制度設計されていて、改めてすごいと思いました!

また、総合スコアランキングやアサイン視点スキルセットも作り、顧客折衝力スキルや実装力のスキルセット等も可視化。顧客へのアサイン時にも参考にしているのだとか。現在社内啓蒙活動中だそうで、これからが楽しみです!!

結果として、アナリストのスキル評価が実現でき、モチベーションアップはもちろん、リソースの最適化やキャリア支援など、会社全体的に良いサイクルが生まれたそうです!

当初はアナリストのための取り組みだったものが、結果としてアナリストと関わる全てにおいて良い影響が出ているのが素晴らしいですよね。しかも、それが Mio Skill Chart という全メンバーが同じツールを中心に回っているところが何より素晴らしいと思いました。

まさに「丸っと解決」!

スキルの定量化は難しいですが、社内全体に良いサイクルが起こせること。また、プレイヤーのモチベーションアップはもちろん、ジュニアプレイヤーの育成、支援にも活かせるというところから、非常にメリットが大きいことがよく伝わってきました。

この手法は、今回はデータアナリストに対しての事例でしたが、アプリケーションエンジニアからインフラエンジニアまで、いろんな職種に対応ができそうですよね。各領域、会社で考え方はそれぞれ異なるかもしれませんが、技術者を抱える会社はどこも共通の悩みを持っているような気がします。

日々能力を磨く反面、それを実際の実務に使える案件がないと、どうしても成果評価だけでは、技術力としての評価は漏れてしまっていると感じます。エンジニアにとって、技術力というのは、自分がプロたる誇りでもあるので、しっかりとそれを評価してくれるのは非常に嬉しいですよね!

藤原さん、素晴らしい取り組み共有ありがとうございました!

(シスメックス / 増森 聡明)

アクセンチュア / 横山様、秋元様、吉田様「カスケード式トレーニング: データ編」

アクセンチュア様より、今までも幾度かご紹介いただいておりました「GCPカスケード式トレーニング」。今回は新しく「データ分析特化型」についてご講演頂きました。しかも、登壇者は4名と非常に贅沢な講演でした!。

知識のエコサイクルが、ライトに・持続的に・社内に広がっていく仕組みについて共有いただきました。

冒頭は、吉田様より、GCPカスケード式トレーニングのおさらいでした。要約すると社内でスピード感をもって、学んだ知識の定着を図るエコサイクルです。インプット後の期間を短くアウトプットを実施するため、自然と知識の定着率が高まっていく素晴らしい仕組みだと思いました

  • 内容:2回/週 30分の口頭試問形式のオンライントレーニング

      予習⇒トレーニング受講⇒アウトプット

  • 特徴:1度生徒で受講された方が、次回は先生になるという方式。
  •    ライトに・コミュニティ広がっていく
  • 効果:GCPサービスの資格保有者・知識を持った社員の増加。コミュニティも加速度的に広がっていく。

事前に社内コミュニケーションツールで共有された内容を予習して、生徒は当日に望むシンプルな仕組み、かつ自助努力を根底としたプログラムとのことです。

当日の質問内容は単に公式ドキュメントをベースにするのではなく、講師側は生徒がどうやったらより学習効率の高い質問や環境を作れるのか自身の体験を基に構想を練るため、より生徒のためになる内容が創造できそうです。

当日の流れです。なるべく少人数で実施することで、1人1人が発言しやすくなるような体制を作っているとのことでした。また、講師側からの一方向な口頭試問形式ではなく、答えられない質問には、講師と生徒がお互いに調べ答えを見つける相互に作用し合っているそうです。

全員が能動的に発言するトレーニング、参加してみたくなります!

ここで秋元さんにバトンタッチ、本トレーニングの立ち上げ背景のお話でした。

背景は、データ分析への興味があった、既にクラウド知識(GCP)は有していた。じゃあそれを掛け合わせよう!と思い立ったそうです。

「1人で学ぶのがつらい・・・みんな一緒です。なのでみんなで学びましょう」by秋元さん、この言葉に鼓舞されスキルブーストに参加希望された方も少なくないはず。

そして、本日のポイント、データ分析型カスケード式トレーニングについて説明いただきました。

ピラミッド下段のPCAの知識に上段のGoogleCloudの強みであるPDE・MLEをプラスアルファして学びましょうということで、それに付随する学習カリキュラムを公式ドキュメントから参照しているそうです。

既に有している知識とそれを更に高めていけるビジョンが明確なので、目的意識を見失わずに取り組み続けることができるのも良い点だと思いました。

続いて気になる体制についてです。学習者が講師になり、かつ講師は二人体制のため1人当たりの作業負荷が少なく持続性のあるトレーニングとなっているそうです。

「講師をやってください」と言われると、諸々の準備を想像して億劫になってしまいそうですが、これだけ講師をするための充実した仕組みがあるとむしろ前向きに担当したくなりますね!

最後になります。本トレーニングのポイントは「どんどん新しい人に参画いただき、活躍してもらう」ことを大切にしており、新入社員の方も研修後に講師となって学んだことをアウトプットすることを楽しんでいるとのことでした!

実際社内での学習プログラムを形成する際に、インプットだけでは定着した気になりがちですし、個人で頑張って知識を高めても社内で広がらなければかえって業務の属人化を招き易くなるかと思います。

その点、新入社員の活躍の機会の創出、それらを持続的かつ広がっていく好循環を具現化している点が素晴らしいと思いました。

年齢関係なく誰もが学びたいことを学べる機会を得られるこの仕組みは、早速自社でも取り入れていきたいです。

アクセンチュアの横山さん、秋元さん、吉田さんありがとうございました!

(株式会社primeNumber / 加藤 大輝)

パネルディスカッション

 イベントの後半は、「データ利活用人材の定義について再考してみる」と題して、パネルディスカッションを行いました。パネリストは、Elastic 鈴木様、アクセンチュア 青柳様、澪標アナリティクス 井原様、ヤマハ発動機 藤井様、グルーヴノーツ 山本様の5名です。ファシリテーターはGoogle 清水様、そして木村様です。

テーマ1: データ利活用人材とは?

 テーマの1つ目は「データ利活用人材とは?」と題して、パネリストのみなさんの視点から見たデータ利活用人材の定義について、ディスカッションを行いました。

 鈴木様からは、ECサイトを運営する会社を事例に、データ利活用人材が多岐にわたるといったお話がありました。インフラから得られるデータを分析するSREエンジニアやDevOpsエンジニアもいれば、モノリスではなくマイクロサービスになっていることで、python、Go、Javaなど様々な言語で書かれた各モジュールを見ているエンジニアチームもいる。それに加えて、もちろんマーケッターもいるため、その各者がデータ利活用人材と捉えられるというお話でした。

 次に、青柳様からは、データを扱う人材にはいくつかロールがあるということをお話しいただきました。1つ目はクラウドやネットワークなど仮想化基盤を扱う人材、2つ目はデータエンジニアリング層としてデータベースやETL、データカタログを扱う人材、3つ目はBIツールを活用した分析ができる人材、4つ目は得られたデータからどうビジネスにつなげるかを考える人材ということでした。特に、4つ目のビジネスにつなげる人材においては、ITの知識は不要であるといったお話でした。

 次に、井原様からも、データを分析する人材と、その分析結果から何をするかを考えられる人が別であるお話がありました。分析結果から考える人材には一定のリテラシーが求められるが、そこまでITに詳しい必要はないということでした。その両者の上に立つ人は、その両者を「通訳できる人」であり、その人こそ真のデータ利活用人材なのではないか、というお話が大変興味深かったです。

 次に、藤井様からは、そもそも全員がデータ利活用人材というお話がありました。藤井様の会社では、全社員を、トップのデータサイエンティストと共通の言葉や文化で会話できるようにするという目標を掲げられているということでした。結果として、全社員がビジネスに必要な情報を自分で取得できるところをめざしているというお話でした。

 最後に、山本様からは、やはり全員がデータ利活用人材であるというお話がありました。もちろん、リテラシーに差はあるものの、誰もがExcelでデータを操作するといった業務をしているため、そのデータがどこから来ていて、正しいものなのかということは全員がわかる必要があるというお話でした。そのため、ひとりひとりが自分も参加するという文化が大事なのではないか、というコメントもありました。

 質問として、データ活用とデータ利活用の違いはなにか、というものがありました。データ利活用人材という言葉は、省庁で作り出した造語ということであったため、かつて国の研究所で働かれていたことがある井原様から回答がありました。定義としては、「利用」は使えること、「活用」はそこから知見を得られること、としていたため、データ利活用人材という言葉は、自身でデータを集計してそこからインサイトを得られる人材となる、というお話でした。現代においては、データ集計が手軽に行えるようになってきているが、この言葉が生まれた当時はHadoopでクラスタを構築することなどが必要だったため、利活用という言葉を使ったというご説明もありました。

 このように、テーマ1ではデータ利活用人材の定義についてディスカッションをしてきましたが、データ利活用人材にはいくつかの種類があるということがまとめになると感じました。加えて、限られた人がデータ利活用人材なのではなく、すべての人がデータを利用して活用している人材なのだと捉える視点が重要なのだとも感じました。

 今、この記事を読んでくださっているみなさんもデータ利活用人材なのだと思います。このJagu’e’rを通じて、様々なバックグラウンドを持つみなさんとデータ利活用を深めていけると嬉しいですね!

(クラウドエース株式会社 / 根本 泰輔)

テーマ2: データ利活用人材を育てるためには?

データ利活用人材の定義に関するディスカッションを踏まえて、ディスカッションは次に「どうやってデータ利活用人材を育てる」か、というテーマに移りました。

データ利活用人材の育成に関して、まず藤井さんから、データ利活用人材育成の取り組みに関する認知を広げて文化を作ることが大事とお話しいただきました。会社としてデータ利活用人材の育成を応援しているという雰囲気を作っていく。最近の課題は、教えることが仕事になってしまい、新しい技術のキャッチアップが後手に回っているメンバーの存在だと感じているそうです。

次に、山本さんから、資格を通して得た知識を実際に試してみることが大事とお話しいただきました。どんな結果が出るか分からないなかでも、実際に手触り感をもって試していくキッカケ作りを意識されているそうです。外部からモチベーションの火をつけることは難しいため、内部で火がついて本気になる、そのような取り組みが自発的に盛り上がるよう、気を付けているそうです。

次に、青柳さんから、その組織で一番課題となっている題材を特定することが大事とコメントいただきました。一番課題となっている箇所について取り組みを行うことで、成果も出やすく周囲の理解も得やすいそうです。

また育成に関して、これまでの経験から、一番育成が難しい領域はデータマネジメントと感じているそうです。「基盤を作る」や「BQでデータを分析する」などのハードスキルよりも、経験がものをいうソフトな領域のほうが育成が難しいと感じているそうです。どうやってデータの品質を上げていくのかといったテーマや DMBOK なども難しい。

青柳さんのコメントを受けて、井原さんからも「ハードな領域よりもソフトな領域のほうが育成が難しい」というコメントがありました。特に、データ分析のPMOなどは難しい。

さらに、日頃、学生との接点がある井原さんからは、学生とのコミュニケーションに苦労することがあるそうです。統計学やデータ分析を学びにきた学生の視点から捉えると、「お客さんに取って分かりやすいパワーポイントになっているか」などは興味の対象外になってしまうこともあるそうです。アカデミックな場に民間企業の方を招いてセッションをすること通して、データをどのようにビジネスへ適用していくのか、一連の流れを体感して納得してもらっているそうです。

デジタル庁でも仕事もされている鈴木さんからは、データ分析の前にデータの取得が大事、現場の実態を把握することが官民共通で大事なのではないか、というコメントがありました。デジタル化を推進すると、既存の業務フローを急に変えられないという話題は常にあり、「データを使った改革を通して、どのような良いことがみんなにあるのか」をコミュニケーションして、関係者の意識を変えていくことが大事だと感じているそうです。

質疑応答

Q1

データ利活用人材は、本当は全社員だ、というようなお話しを聞いていて、確かに深い洞察だと感じた。一方で、多くの企業ではそこまで深い咀嚼はされていないように感じている。質問としては、そういった洞察の深さの差を生む要因は何なのだろうか。

A1

トピックに対して、他人事として捉えているのではないか。部下に指示だけ出せばできるのではないか、と思っているように見ている。経営層が自分事として考えることが大事だと考えている。エライ人ほど「やっといて」と言ってしまいがちなのだが、これではいけない。(藤井さん)

Q2

データ利活用人材としてのスキルをアップしていきたい。ハードスキルに加えて、ソフトスキルを身に着けていきたい。

A2

ソフトスキルの評価は難しい。例えば、国際的な学会で社外メンバーと協力して論文を出すなど、業務外でターゲットを設定してもらっている。業務で活用できていることは評価の基準としては設定しておらず、もし業務で活用出来たら嬉しい、という温度感で捉えている。ここは事業会社だと難しい制度かと思うが、澪標アナリティクスはアナリティクスの専門部隊であり、こういった KPI の設定が許容される。(井原さん)

オンラインのパネリストから最後に一言…

業務の課題が明確になっていることが大事。「他社でこんなことやっているから、やってみる?」という程度の温度感だと、部署を横断した取り組みを立ち上げるところまでは至らない。(青柳さん)

好きな人は勝手にやってしまうはず。好きな人のコアを固めることが大事、好きでない人に「好きになれ」ということは難しい。そのうえで面白がって入ってくる人を迎えて、仲間を見つけて、祭りを大きくしていく。スキルは勉強すれば身につく。(山本さん)

総括

このパネルディスカッションを当日聞いた時には、情報量が多くて、パネリストが何を言っているのか、正直、頭が追い付いていなかったです。

こうやって、ブログを書きながら、録画を3回ほど見直して、やっと理解が深まりました。

個人的に印象に残ったポイントは二つあり、一つはデータ利活用人材というテーマについて他人事として捉えていては一流でないということ。藤井さんのコメントにありましたが、「誰かやっといて!」ではなく、本質について迫っていく覚悟を問われているように感じました。この思考は、そもそもデータ利活用に限った話ではなく、サステナビリティや仕事、ひいては自らの人生について、真摯に向き合っていますか、ということなのだと感じました。

また二つ目は、データ利活用人材の育成についても、仲間を見つけて、一緒に祭りを仕掛けていくことが大事ということ。そのような山本さんのコメントは、普段コミュニティ活動をしているメンバーにとって、改めてコミュニティの価値とは何だろうか、と問い直す機会をいただきました!

改めてパネリストの皆さま、ご登壇いただき、ありがとうございました!🎉

(アクセンチュア株式会社 / 秋元 良太)

所感・まとめ

今回は、各企業様のデータ活用人材の育成について、考え方、アプローチ方法、成果についてとても幅広い知見をお聞きすることができました。
各社各様の内容でしたが、共通する事柄として「成長の実感」と「仲間を増やす(広げる)」というキーワードが多く見られました。
振り返ると2時間とは思えないほどの量、かつ社外に公表しても大丈夫なのかな?と心配になる程の貴重なナレッジ共有がありました。
兼ねてよりJagu’e’r の両分科会は凄いと聞いていましたが、参加してみたら本当にみなさんの熱量が凄かったです
あたかも自分事のように質問や議論を交わされており、気づけば私自身にも熱が浸み込んでいたのには驚きました。
今回のコラボイベントを通じて、さらに参加された方々の社内にてデータ活用が進んでいくといいなと思っております!
登壇者の皆様ありがとうございました。

(株式会社primeNumber / 加藤 大輝)

次回予告!

データ利活用分科会、次回のイベントは今年最後!!年末 LT 大会です!!
年末恒例、オンラインはフルオープンなイベントになりますので、是非是非周りの方にお声かけくださいませ!